January 2020

VULTURE CAPTALISM

生涯を動物学に捧げた大富豪
第2代ロスチャイルド男爵

text stuart husband

“ 鳥( 時に女性を意味する)”は、ウォルターに名声をもたらす一方で、彼が最終的に没落する一因にもなった。

 彼は一度も結婚しなかったが、手のかかるふたりの恋人を養った。ひとりは彼との間に娘をもうけた女優志望のマリー・フリデンソン、もうひとりはリジー・リッチーといい、いずれも国王エドワード7世の夜会で出会った女性だった。

 ウォルターはふたりを別々のアパートメントに住まわせて二重生活を楽しんだが、リジーがマリーの存在に気づくと彼を脅し始めた。ウォルターはその重圧に耐えられず、最終的には弟のチャールズが介入し、財産と現金で彼女たちを追い払うことになった。

 ところがその後、彼は3人目の恋人に40年間も恐喝されるという事態に陥った。相手の名前はいまだに不明だが、ウォルターの姪であるミリアム・ロスチャイルドが著したウォルターの伝記(1983年出版)の中で、その恋人は「魅力的で機知に富んでおり、貴族的で容赦がない」と形容されている。

 彼は結局、口止め料をこしらえるために愛するコレクションの多くをアメリカ自然史博物館に安値で売り払う羽目になったのだ。晩年特に大切にしていた65羽のヒクイドリの剝製は手放さずに済んだが、その後数年のうちに彼は健康状態が急激に悪化し、69歳でこの世を去った。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 32
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