January 2020

VULTURE CAPTALISM

生涯を動物学に捧げた大富豪
第2代ロスチャイルド男爵

text stuart husband

 ウォルターはやがて、ボン大学で自然科学を、ケンブリッジ大学で動物学を学ぶ。キャンパスには生きたキーウィの群れとともに現れて、動物学への傾倒ぶりを示してみせた。毛玉のようなキーウィの外見と内気な性質を愛してやまなかったのだ(大学側は彼の熱意を理解できず、キーウィは速やかに戻された)。

 卒業後の彼は一族の銀行に勤めることになったが、金融に対する適性と熱意はあまりにも乏しかった。だがウォルターに甘い両親は、仕事の褒美として一族の私有地を使ってウォルター・ロスチャイルド動物学博物館を創設(1892年に開館)。もちろん、新しい展示品を求めて世界中を旅する息子の旅費も負担した。

 この博物館には、キャプテン・クックの船旅で発見された各種の鳥や、チャールズ・ダーウィンがビーグル号でガラパゴス諸島へ旅した際に得られた動物の皮も展示された。

「自然界に対する愛情と強い興味を分かち合いたいというウォルターの願いが、この博物館の誕生を促したのです」と話すのは、同館の展示物管理人を務めるアリス・アダムズ氏だ。同館は現在、ウォルターにインスピレーションを与えた大英自然史博物館の分館となっている。「彼は聡明で几帳面で意志が固く、人付き合いが苦手でした。しかし何より、動物学への情熱が強かった。学問的業績によって名を成し、動物学者として一目置かれることを望んでいました」。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 32
1 2 3 4 5 6

Contents