Thursday, June 15th, 2017

BLOOD PRESSURE

共演で取り戻した“親子”

俳優のドナルド・サザーランドと、その息子であるキーファー・サザーランド。
ふたり合わせて80年を超える映画業界との関わりを経て、
ついにスクリーンでの出会いを果たした。
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ドナルド・サザーランド(右)と幼いキーファー(左)。

 数年前のある日、キーファー・サザーランドはボルボに一本の電話をかけた。父のドナルドは、大手自動車メーカーである同社のテレビコマーシャルで、何年も前から朗々たるナレーションを披露していた。キーファーは冗談半分に、自分ならその仕事を半額で請け負うと提案したのだ。結局父を出し抜く計画は失敗したが、「僕よりドナルド・サザーランドの声真似がうまい人間は見つからないのに」と不服を漏らしたという。

 父の影から逃れることはできなくても、せめて悪戯してみようという息子の心境が、これほど露呈するエピソードもないだろう。キーファーにとって、父親と多くの共通点があることを認める行動だった。突き出た顎、青い瞳、筋張った体格、そして豊かなバリトンボイスもそうだ。

 しかし同時に、テレビシリーズ『24』のジャック・バウアーとして10年間を過ごすことで、役者として独自の得意分野(早口でそっけなく、ぶっきらぼうで毅然としたアクションヒーロー)を確立したという自負の表れでもあった。父・ドナルドが『M★A★S★H マッシュ』や『赤い影』、近年の『ハンガー・ゲーム』シリーズのスノー大統領役などを通じて磨きをかけた、奥ゆかしく控えめな演技とは明らかに対照をなす役柄だ。

 ドナルドが「僕の存在は息子の独創性を妨げてきた」とか「息子は背が低いだけで外見までそっくり」といったコメントを公の場でしてきたのだから、息子が父とかけ離れた芸風を目指すのも無理はない。キーファー自身は「父はきわめて強く、計り知れない影響を与えてきた」と語っているが、ふたりの悩み多き歴史を振り返ると、さまざまな感情が入り混じった発言に聞こえてならない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
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