Sunday, February 2nd, 2020

THE BIG BANG

80年代狂騒曲

text stuart husband

 貧富の差は拡大して深い溝が生まれ、スターから転落してしまった者もいた。マキナニーの作家仲間であるブレット・イーストン・エリスが1985年に出した小説『レス・ザン・ゼロ』は、愛情のないセックスやドラッグにふけるアンニュイなシーンを描いて当時の空気をうまく捉えていた。

 皺寄せというものはどこかに来るものだ。ソ連の共産主義に綻びが生まれ、1989年にはベルリンの壁が崩壊した。

 一方で、個を礼賛する風潮が盛り上がりを見せた。1989年の大晦日、私はシドニーの大規模な野外パーティーに参加していたが、周囲の誰もがサイリウムを振り、散大した瞳孔を空に向け、1990年の初日の出の瞬間まで、6時間も元気に騒いでいた。MDMAにまみれたレイブカルチャーが新時代の到来を告げようとしていたのだ。それは“エリア”全盛期の弱肉強食の世界とは実に対照的だった。

 80年代は時代錯誤だったのか? それとも、私たちが今生きる時代の前触れだったのか? もちろんどちらともいえるが、まさにセレブリティや富を消費する現代の私たちが見れば、後者のほうが優勢だ。

「かつて人々がすべてを60年代のせいにしたように、あらゆる社会悪は80年代のせいだと誰もが思うようになるだろう」とピーター・ヨークは言った。「さまざまなビッグバンが拝金主義や規制緩和政策、自由至上主義を解き放ち、80年代以降のカルチャーを生み出してきた」。

 クリエイティビティや市場原理を高揚させた80年代がなければ、ヘッジファンドも、レディー・ガガも、ダミアン・ハーストも、オリガルヒも、トランプ大統領も存在しなかっただろう。1980年代から30年が過ぎたが、当時の空気感はいまだに色濃く残っている。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 29

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