January 2020

フィレンツェの至宝
“LIVERANO & LIVERANO”が指南する
一生モノの仕立て方 Q&A

時代を超越した独自の美意識でRAKISH MENを魅了するリヴェラーノ&リヴェラーノ。
その2大キーマンであるアントニオ・リヴェラーノ氏と大﨑貴弘氏に
一生モノを仕立てるうえでの心構えやオーダーのポイントを詳しく聞いてきた。
text hiromitsu kosone
photography mitsuya t-max sada

Antonio Liverano / アントニオ・リヴェラーノ(左)1937年、南伊プーリアのパラジアーノ生まれ。7歳からサルトの道に入り、48年にフィレンツェへ渡る。兄ルイージとともに技を磨き、78年にリヴェラーノ&リヴェラーノをオープン。今も現役でアトリエに入っている。仕立ての技はもちろん、華やかな色使いによる独自のスタイルでも顧客を魅了する。

Takahiro Osaki / 大﨑貴弘(右)1979年生まれ。2002年にフィレンツェに移住し、リヴェラーノ&リヴェラーノに参加する。現在はショップマネージャーとして同店を牽引。日本や香港など海外のトランクショーにもアントニオとともに赴き、世界中のRAKISH MENと交流している。2016年に開いたプレタポルテの工房も大﨑氏が取り仕切っている。

Q1:そもそも、何故ビスポークは一生モノになりえるのか?
A:ハンドメイドによる最高のクオリティもひとつの理由ですが、それに加えてテーラーがそのお客様ひとりのためだけに作る服であるということが大きいと思います。テーラーにはそれぞれ美意識があり、それをお客様の体型やイメージ、着用するシーンなどに合わせてベストな形で具現化していきます。生地のご提案やシルエットづくり、ボタン選びなど細部に至るまで、その方を最も魅力的に見せるよう最善を尽くして仕立てられるのがビスポーク。それゆえに、時代を超えて愛用することができるのです。

Q2:一生モノを仕立てるうえで意識するべきことは?
A:先ほど申し上げたとおり、テーラーにはそれぞれの美意識があります。何をよしとするかはそれぞれですが、共通しているのはお客様のために最高の1着を作ろうという思い。ですから、ご自身の感性と合うテーラーを見つけたら、全面的に信頼してあげることが重要です。ミリ単位で寸法を指定したりするのはおすすめしません。テーラーの美意識に反して仕立てさせても、いい服ができることはありませんからね。それに“ラペル幅は何センチ”などと神経質に指定しても、着ていくうちに広がって変化してしまいますよ(笑)。

Q3:仕立て服を長持ちさせるために心がけることは?
A:できるだけ“何もしない”こと。何度もクリーニングに出すとどうしても傷んでしまいますから、1日着たら3~4日休ませて、服にダメージを蓄積させないことを意識してください。

Q4:生地選びはバンチとストック、どちらがおすすめか
A:ストックから選ぶことを強くおすすめします。リヴェラーノでは、ストック生地の大半は1着分しか買い付けていません。つまりここから選べば、オンリーワンの1着になるということです。一生モノとして、特別な価値をプラスしてくれることでしょう。

Q4:長さにして計5000m以上はあるという膨大なストック生地。

Q5:イタリア生地か、英国生地か
A:どちらにも魅力がありますが、ベーシックな無地系なら英国、柄の美しさで選ぶならイタリア生地でしょうか。

Q6:春夏スーツの一生モノを仕立てたい
A:ドーメルのモヘア混生地「トニック2000」とドラッパーズのウールシルクがおすすめです。前者はハリがありつつ重すぎず、軽やかで仕立て映えもします。後者はいわゆるサンクロスで、日差しを受けると玉虫のように色みが変化するのが特徴。どちらも少し明るめのネイビーを選んでいます。また春夏用としてはコットンもいいですね。今回はドラッパーズのものを選びました。長く着るほどに味が深まる魅力的な生地です。

Q6-1:玉虫色に輝くドラッパーズ(左)は贅沢なシルク混。右のドーメル「トニック2000」はウールモヘアの名作としてお馴染み。

Q6-2:ドラッパーズのコットンは洒落者からの支持も厚い。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 29
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