Sunday, February 2nd, 2020

THE BIG BANG

80年代狂騒曲

text stuart husband

「80年代は不当に低い評価を受けている」と語るのは、テーラー兼デザイナーのティモシー・エベレスト。彼は80年代初頭にトミー・ナッターのもとで働き始め、80年代末頃には自身のアトリエを立ち上げた。「トミーが“人々にこれほどエネルギーが漲るのは久しぶりだ”と言っていたことを覚えてる。やろうと思えば何でもできると誰もが思っていた。毎晩何かが起こり、起こらなければ自ら何かを起こす。エキサイティングな時代だった」。

 PR業界の大物、リン・フランクスはインデペンデント紙で次のように回想している。「暗い70年代のパンクから、派手で騒々しい“デザイナー”の時代に変わった。デザイナーズブランドやデザイナーズドリンク、デザイナーズ建築など、何もかも主役はデザイナーだった」。

 作家で社会評論家のピーター・ヨークもインデペンデント紙にこう語った。「当時のニューヨークとロンドンでは、欲しいものが何でも手に入った。時代の最先端で、お金もあった。新興成金は桁外れ。ロンドンのドックランズにあるアパートメントやニューヨークのトライベッカのメゾネットを目にして“すごいなぁ”と思ったもの。若いブローカーやアーティスト、作家まで、そんな家が持てると考えたんだ」。

 80年代は実力主義の幕開けだった。家系や生い立ちよりも、しかるべき容姿や名声のほうがものをいう。誰もが富と名声に取り付かれ、その片方もしくは両方を持つ者ならではの住まいと生活にこだわった。かの強気な不動産王も例外ではない。1983年には五番街に豪華なトランプタワーが誕生して話題を呼んだ。

『ザ・トゥナイト・ショー』のジョニー・カーソン(中央)。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 29

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