Sunday, February 2nd, 2020

THE BIG BANG

80年代狂騒曲

text stuart husband

富を手にした者たちのスタイル 80年代にはあからさまな自慢話をよく耳にしたものだ。中でもウォール街やシティのトレーディングルームは特別だった。

「アメリカではレーガンの経済政策が“ブードゥー経済学”と呼ばれていたが、世界中のマーケットでも同じことが起きていた」とピーター・ヨークは言う。

「金融畑の人間がいわゆる“クリエイティブな業界”と付き合いだした。彼らも業界の一員になったんだ」

 いつの時代もイメージは重要だ。「80年代初頭は、アルマーニのデコンストラクテッド・スーツを誰もが求めた」と語るのはティモシー・エベレスト。「みんな『アメリカン・ジゴロ』(1980年)のリチャード・ギアに憧れたんだ」。

 しかし、大金を稼ぐようになった者は一様にパワースーツを着用した。ネイビーのチョークストライプや、プリンス・オブ・ウェールズ・チェック。カッタウェイカラーやボールドストライプのシャツ。主張の強いネクタイにサスペンダー。

 80年代中盤は実に華やかな時代で、若いトレーダーたちはミンクのコートを着ていた。そんなスタイルを維持するには金がかかるが、誰もが自信満々に見えた。もちろんそれはコカインの力もあったが。

 クルマも重要な武器だった。「赤いポルシェ911 タルガ・ターボはクラシックなシティカーとして人気があった」とエベレストは言う。

「フェラーリのテスタロッサもモダンでよかった。もしくはゴルフGTI Mk1かメルセデスのSクラス。ヴィンテージカーに乗るのも最高にクールだった。私は2ドアのメルセデスクーペを持っていたし、建築家にはベントレー コンチネンタルを運転する者が多かった。でも、この街の人々が当時やっていたことの多くは違法すれすれ。いつ崩れるかわからない砂上の楼閣のようだった」。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 29

1 2 3 4 5 6 7

Contents