July 2019

AMELIA EARHART : A SYMBOL OF NEW WOMANHOOD

新しい女性像のシンボル
アメリア・イアハート

アメリア・イアハートは、その振る舞いと姿勢によって、“女性は家にいるもの”というイメージを変えた。彼女の伝説は、今日ますます輝きを増している。
text stuart husband

Amelia Earhart / アメリア・イアハート1897年アメリカ、カンザス州出身。飛行家・パイロット。1932年女性として初めて大西洋単独横断に成功し、一躍時の人となる。1937年7月赤道一周飛行に挑戦中、太平洋上にて消息を絶った。彼女の行方は、前世紀最大のミステリーのひとつとされる。また、その自由奔放な生き方は、現代に至るまで多くの人々の共感を呼んでいる。

レザーコートとレースアップ・ブーツに身を包んだアメリア・イアハート。そのボーイッシュな外見から、バイセクシャルであるという噂があった。シカゴにて(1928年)。

 2018年3月、過去何十年にわたって議論されてきた大きな謎を解決すると思われる発表がなされた。『フォレンジック・アンソロポロジー』誌が、1940年に東太平洋のニクマロロ島で見つかった頭蓋骨を含む骨片が、99%の確率でアメリア・イアハートのものであると発表したのだ。女性パイロットの先駆けであり、1937年7月2日に、ナビゲーターであったフレッド・ヌーナンとともに行方がわからなくなった、世界で最も有名な“行方不明者”である。彼女が消息を絶ったのは、ツインエンジンの愛機、ロッキード・エレクトラとともに、赤道に沿った世界一周を達成しようとしていたときだった。

 骨のそばには、女性物の靴と、ヌーナンによって用いられていた六分儀を入れる箱、そしてハーブ・リキュール“ベネディクティン”のボトルがあった。それはイアハートが飛行中に好んで飲んでいた酒だった。

 当時の検死では、骨はがっしりとした男性のものであると結論づけられていた。しかし、最新の法医学コンピューター・プログラム“フォーディスク”による数値解析で「骨は女性のもの。しかし彼女は、当時のヨーロッパ女性の平均より大分背が高い」とされたのだ(イアハートの身長は約170cmだった)。

 ここにひとつ問題がある。骨自体が長らく行方不明となっているのだ。だから骨そのものを再検査することはできない(フォーディスクは、当時測定された数値を元に再推論したにすぎない)。

 骨が行方不明になったことで、イアハートのミステリーは、ますます伝説的となった。すべてが国家的陰謀による仕業で、彼女は日本のスパイで、シークレット・ミッションを遂行している間に失敗し、日本の刑務所に入っていた……。さらにその後、秘密裏にアメリカに戻って主婦として生き永らえ、ニュージャージーで生涯を終えたというトンデモ説まである。彼女はまさに“列聖”されたのだ。

 1990年代には、彼女はギャップとアップルコンピュータの両方の広告キャンペーンに登場し、ギャップのカーキのトラウザーズを宣伝し、アップルの“Think Different”というスローガンを体現してみせた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 29
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