Sunday, February 2nd, 2020

THE BIG BANG

80年代狂騒曲

text stuart husband

明確になった貧富の格差 それまで一緒に遊ぶことのなかった銀行家と彫刻家、モデルとソーシャライトの妻、大物パブリシストと若手小説家など、意外な顔ぶれが集う人気スポットも生まれた。

 1980年末にウエストブロードウェイにオープンした「オデオン」は、アップタウンの住人をトライベッカの未開拓エリアに引き寄せた。そして毎夜のごとく魅力とエネルギーの漲る面々でひしめいていた。

 ウォール街の若き金融家や、ジャン=ミシェル・バスキア、キース・ヘリング、ブルック・シールズ、カルバン・クライン、ジュリアン・シュナーベル、アンディ・ウォーホル、そしてブレット・イーストン・エリスやジェイ・マキナニーがカクテルを楽しんでいた。

 ちなみに、1984年に出版されたジェイ・マキナニーの長編デビュー作『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』の表紙にはオデオンのネオンが描かれている。

 この小説はフィクションというよりも当時の貪欲で煌びやかな世相を凝縮した作品として歓迎された。登場人物はオデオンの常連客のようにステーキを注文するが、仲間との会話や、ドラッグや情事を楽しむための憩いの場(=トイレ)に行くのに夢中で、ほとんど手をつけなかった。

 チェルシーの高級デパート、バーニーズ ニューヨークも人気スポットだった。これは80年代中盤にディスプレイディレクターに就任したサイモン・ドゥーナン(現クリエイティブ・アンバサダー・アット・ラージ)の評判によるところが大きい。

 彼が駆け出しの頃に手がけたのは、サヴィル・ロウにあるトミー・ナッターのウインドウディスプレイ。ネクタイをしたネズミがゴミ箱を漁るという演出は、実に斬新だった。彼は1986年に開かれたリーバイスのエイズ慈善チャリティオークションを回想録でこう振り返る。

「イマン・アブドゥルマジドやデボラ・ハリーなどのセレブリティやモデルが、バスキア、ウォーホル、アルマーニ、YSL、ヴァレンティノといったアーティストやデザイナーによってカスタマイズされたジャケットを纏って登場した。特に、エイズに苦しむ友人のマーティン・バーゴインが手がけたジャケットを纏ったマドンナは強く印象に残ってる」

 ドゥーナンはこのようなイベントを通して、アップタウンとダウンタウンの境界線をなくしたいと考えていた。「境界線は今よりずっとはっきりしていたし、その亀裂が生まれたのも80年代だった」。

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 29

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