June 2021

Exclusive Interview: JOSH BROLIN
HOPE FLOATS

俳優ジョシュ・ブローリン:宙を舞う希望

text tom chamberlin
photography kathryn boyd brolin

「毎朝5時半に起きて、1978年式のシェビートラックを運転していたよ。ハンドルの上から前が見えるように、お尻の下に電話帳を2、3冊敷いてね」

 牧場には60頭以上の馬がいたが、オオカミ、クマなどの保護された野生動物もおり、野に帰したり動物園へ引き渡したりするために彼の母が世話をしていた。ブローリンの兄弟は、オオカミが逃げた際に脚を60針縫う羽目になったこともある。

「母は無責任だったかもしれないね。でも男は“男らしく”という考えの人だった」

 俳優という彼の未来の職業には、父親が俳優だったことよりも、牧場での経験のほうが影響を与えたように見える。

「思うに、(演技に対する自分の関心は)人間の行動理由への強い興味に根差していたのかもしれない。自分も甚だ非常識な行為を山ほどしてきたから」

 思春期にはシト・ラッツというギャングの一員だった。サンタバーバラ拠点のサーフィン仲間とドラッグや悪さに手を出したが、グループは機能不全家庭の子どもたちに帰属意識を与える一面もあった。

「捌け口は自滅的なものばかりだった。ロサンゼルスに引っ越したとき、僕は好ましい自分を見せようと頑張った。でも僕には自分が育った文化・習慣が染み付いて、それに頼り続けてしまった」

 話を聞いていると、彼には人生の所々が省略されているように感じることがあった。青春時代から大人へと一気に進むと“人間の行動理由に興味があった。非常識な行為を山ほどしてきたから”いった具合だ。それは彼が就学中にハーレーダビッドソンのみならず、飲酒や薬物も経験していたことが原因なのだが。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39
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