Thursday, June 17th, 2021

REAP THE WHIRLWIND
―Breguet ブレゲ―

トゥールビヨンという
原点への敬意

超高級時計に搭載される複雑機構として最も知られるのはやはりトゥールビヨンだろう。
発明した時計師の名を冠したメゾン、ブレゲは、誰もが認めるトゥールビヨンの匠である。
text nick scott

クラシック ダブルトゥールビヨン 5345 “ケ・ド・ロルロージュ”超複雑なムーブメントの動きを正面から鑑賞できる、2020年発表の傑作。“B”マークで覆ったふたつの香箱を載せたプレートは、12時間で 1回転。ふたつのトゥールビヨンを結ぶブリッジの半分に塗られたブルーが時針として機能する。ストーン加工を施したラバーストラップのアクセントカラーは、写真のブルーを含む4色から選ぶことができる。手巻き、Ptケース、46mm。¥70,600,000(※2021年3月現在の価格)Breguet(ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211)

“重力に抗う発明”というと、多くの人はライト兄弟がノースカロライナ州キティホークにて鳥を模した翼で飛ぼうとした初飛行を思い起こすだろう。あるいはヘリコプターより500年前のレオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチ、「空圧ネジ」を連想する人もいるかもしれない。

 しかし時計愛好家ならば、1795年にアブラアン-ルイ・ブレゲが成し遂げた画期的な発明を思い浮かべるはずだ。彼は、アンクル、テンプ、ヒゲゼンマイといった部品の性能に重力がどう影響を及ぼすかを観察し、時計の歴史を変えるほどの本質を悟った。回転するキャリッジに特定の部品を格納すると、問題となる部品同士の差異が相殺され、重力の問題を克服できることに気づいたのである。

 ブレゲは1801年にこの機構の特許を取得し、フランス語で「渦巻き」を意味する「トゥールビヨン」と名付けた。1806年には、パリの工業製品の博覧会で、垂直でも傾いた状態でも精度を保つ時計を発表。このトゥールビヨンは、知識人たちの間でたちまち評判となった。ブレゲの顧客には、マリー・アントワネットやスペイン国王、ロシア皇帝アレキサンドル1世などがいたが、フォーミニッツ・トゥールビヨンのひとつは、ナポレオン戦争のさなかにイギリス国王ジョージ3世にひそかに販売されたという。

 その後、ブレゲは生涯で35個のトゥールビヨンを完成させているが、現存するものはわずか10個。その内部機構はほとんど見られない。しかし機械式時計復活の機運が再燃して以降、トゥールビヨンの人気は年々確実に高まっている。

本記事は2021年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39

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Contents

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