From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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清水宗己さん

清水宗己さん

 編集者、ライター、コピーライター、放送作家、スキッパー、超兄貴

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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さまざまな肩書きを持つ、清水宗己さんのご登場です。

私が清水さんと初めてお会いしたのは、今から20年以上前のことです。当時は雑誌メンズ・イーエックスの創刊スタッフとして活躍されており、圧倒的なパワーと造詣で、編集の現場をグイグイと引っ張っておられました。その頃の私はまだ20代のぺーぺーで、清水さんに言われるがままに駆けずり回るばかりで、その圧巻の仕事ぶりを、目を丸くして眺めていたものです。

 

清水さんは、海外を転戦するような本格的なレースにも参戦する、プロのヨットマンでもありました。いつも真っ黒に日焼けした肌と、筋肉隆々の体、そして豪快な性格から、皆に“超兄貴”と呼ばれていました(兄貴を超えた兄貴ということで)。今回久しぶりにお会いしましたが、その超兄貴っぷりに、いささかの衰えもありません。

 

撮影現場にTシャツと短パンに現れた清水さんは、開口一番、

「いやぁ、沖縄でレースに出て来たばかりなんだけど、いろいろやっちゃってさぁ・・・手首をひねって手がパンパンになっちゃったよ」と破顔一笑。

見れば左手は大きく腫れており、膝小僧には大きなバンソウコウが貼ってあります。まるでガキ大将(失礼!)のようなお姿です。しかしこれで御年70歳なのですから驚きです。

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コットンのスーツはバタク。生地は昔のハリソンズを使って、アメトラ風に仕上げてあります。

「いつもはTシャツに短パンばかりだけど、ヨット関係はパーティも多い。そういう時には、スーツも必要なんだ。しかし胸板が厚くて骨太なので、既製品だと合わない。そこで友人から薦められたバタクで、一着誂えてみることにしたんだ。実際に作ってみたら、オーソドックスで着やすくて、すごくよかった。今ではスーツ3着に、ブレザーも持っているよ」

 

ボタンダウンのシャツもバタク。素材はギザのロイヤルオックス。

 

メガネはルノア

「ヨットに乗りすぎて目が焼けてしまった。だからいつもサングラスが必要なんだ。ルノアはシュツットガルトにある工房へ取材に行ってからファンになった。これはグローブスペックスの岡田哲哉さんに作ってもらったもの。彼は検眼が上手だから安心して任せられるね」

実は私も、岡田さんに作ってもらったルノアを愛用しています。

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 時計はジラール・ペルゴのトノータイプ。

「買ったのは90年代前半かな。当時のメンズ・イーエックスの時計担当に薦められてね。前社長のルイジ・マカルーソ氏とは何度も会ったことがある。もう死んじゃったけど、いい人だった・・」

 

シューズはジェイエムウエストン。90年代にずっと通っていたジュネーブで買ったもの。

 

「若い頃はVANの影響で、アメリカン・トラッドが流行っていた。昔はアメ横へ行って、ハナカワや小池といった店でよく買い物をしたな。今でも基本的にはアメトラが好きだ」

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清水さんは、学生時代からコピーライターとして仕事を始め、スタヂオ・ユニ、サン・アド(元サントリー宣伝部)、ブルータス、ターザンなど、超一流処を渡り歩いて来られました。

「サン・アド時代に、オーストラリアからハワイまで回る、大きなヨットレースに出場できるチャンスがあって、どうしようか迷っていたら、当時の上司に、『そんなもの簡単だ。今すぐ辞表を書け。滅多にないチャンスなんだろ』と言われた。それが開高健さんだった」

 

その後、1980~90年代にかけて、日本の広告・マスコミ業界が、最も輝いていた時代を駆け抜けました。

「80年代には、毎月のようにロサンゼルスへ行っていた。当時は円が強かったから、日本でロケするより、その方が安かったんだ。札束を抱えていって、外国人スタッフ全員に、毎日現金でギャラを払っていた。パタゴニアのイヴォン・シュイナードと知り合ったのもその頃。ベンチュラの本社は肉屋の建物をリノベしたもので、近くには社員のためのアウトレットがあった。そこでずいぶんと買い物をしたよ」

 

小さくまとまってしまった今の編集者と違って、清水さんの時代は何もかもが豪快です。

「南米のインディオの結婚式を取材することになったんだ。ところが直前になって、『カネがなくて、式が挙げられない』という。『どうすればいいんだ』と聞いたら、『とりあえず牛一頭あれば、なんとかなる』ときた。だから本当に牛一頭買ってプレゼントしたんだよ。その牛を丸ごと焼いて食べたんだが、中の方は生焼けで、アレには閉口したなぁ(笑)」

 

こういったエピソードは、枚挙に暇がありません。

 

さらに清水さんは、横浜の伝説のライダース・クラブ“ケンタウロス”のオリジナル・メンバーでもあります。

「ボスの飯田さんは、もともとは関内の本屋の息子なんだ。東洋大の哲学科を出たインテリでね。そこで声をかけられてケンタウロスに入った。だからイメージとは違うかもしれないけど、ケンタウロスはとても知的なクラブで、メンバー13人のうち4人はクリエイターだったんだ。雑誌“ライダース クラブ”の創刊を手掛けたのも、ケンタウロスのメンバーたちだった」

 

昔の雑誌は面白かったと言われますが、それは清水さんのような人たちが手掛けていたからでしょう。

「面白い人が作る本が、面白い」

現代のサラリーマン編集者としては、反省することしきりです。

 

超兄貴! また、いろいろと教えて下さいね!

中寺広吉さん

中寺広吉さん

バタク代表取締役、モデリスト

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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 ビスポークテーラー、バタクの中寺広吉さんのご登場です。撮影と取材は、新宿御苑に臨む、バタクのビスポーク・サロン“batak NAKADERA”にて行ないました。

室内にはアイリーン・グレイやジオ・ポンティの名作、および北欧のアンティーク家具が並び、その上にラリックのオブジェが飾ってあります。アキュフェーズのアンプで鳴らされるB&Wのスピーカーからは、静かにバッハやビル・エヴァンスが流れています。花瓶に活けられているバラの花の赤と、ビロードのカーテンの濃紺が、美しいコントラストを成しています。そして窓外には、御苑の緑が一面に広がっています。

 

私もいろいろなテーラーへお邪魔しましたが、こんなに素敵な空間は見たことがありません。ここのインテリアに接しているだけで、オーナーの中寺さんが並々ならぬ感性の持ち主であることがわかります。

「建築やインテリアは大好きです。もしかすると服より好きかもしれない(笑)。でも、そういったことは大切だと思うのです。日本のテーラーの技術は、確かに高くなりました。しかし、洋服しか知らない人が多過ぎる。キレイに縫ってはあるけれど、雰囲気がないのです。その点、まだまだヨーロッパには見習うべきところが多いと思います」

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 バタクの創業は1994年。今でこそ、日本にはたくさんのお洒落系テーラーがありますが、当時はテーラーといえば、敷居の高い老舗か町の仕立屋しかなく、バタクは孤軍奮闘といった有様でした。ちなみに私の古巣メンズ・イーエックスの創刊は1993年ですから、同じような時期に、同じようなことを始めたのです。中寺さんとは年齢も同じなので、昔の話をすると、共通点がとても多いのです。

「小学校の頃、ドラマ『傷だらけの天使』を見て衝撃を受けました。主演の萩原健一さんのスーツがとにかくカッコよかった。作っていたのは、タケ先生(デザイナー、菊池武夫さん)率いるメンズ・ビギでした。その後のDCブームを経て、私もメンズ・ビギへ就職することになりました。パタンナーをやっていましたが、その頃はすでに自社の服には興味がなく、英国の1930〜40年代の古着ばかり着ていました。デザイナーになろうとも思いましたが、どうしても実際のモノ作りをやりたくて、モデリストの道を選びました」

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スーツはもちろんバタク。シャークスキンの生地はゴールデンベール(希少な羊毛原糸)を使ったテーラー&ロッジ製で、バタクのオリジナルだそうです。

シャツもバタク・オリジナル。生地はトーマス メイソン製。

タイもオリジナル。7センチ幅のナロータイです。

 

時計はヴァシュロン・コンスタンタンのアンティーク。1930年代製だそうです。

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タッセル・シューズは英国フォスター&サンズのビスポーク。

「やはり英国の靴が好きなのです。最近はフォスター&サンばかりですね。日本に定期的にトランクショーに来るので、その時にオーダーしています」

 

「今日のコーディネイトは、地味な50年代の感じを意識しました。ファッションにおいては“足す”よりも“引く”ほうが好きですね。シャツは9割は白、靴も8割は黒です」

とクールに仰います。

 

うーむ、これまた完璧なスタイリングですねぇ。ここまでいろいろと完璧だと、ちょっとイジワルな質問もしてみたくなります。

「中寺さんというと、ストイックなスーツのイメージですが、カジュアルは着ないのですか?」との質問には

「いえ、もちろん着ますよ。アメカジが基本です。休日はリーバイスの501やフレンチラコステのポロ、コンバースのジャックパーセルなどを愛用しています」とのお答え。

さらに突っ込んで、「私には、いま6歳になる息子がいるんですが、保育園時代は、チャイルドシートのついたママチャリで送り迎えをしていました。中寺さんにも娘さんがいらっしゃいますよね? まさか、ママチャリは乗ったことありませんよねぇ?」と問うと、

「いえ、実は乗っていましたよ。アレは本当にダサイんですが、他に方法がなかったので。『誰かに見られたら嫌だなー』と、いつも思っていました(笑)」

ああ、なんとなくそれを聞いて安心しました。ママチャリをこいでいる中寺さん、見たかったです。

 

P.S.さて、ずっと近しい世界にいた中寺さんと私ですが、実は洋服をお願いしたことはなく、今回初めてビスポークのオーダーをさせて頂きました。フォックスブラザーズのフランネルで、ネイビーのチョーク・ストライプ、ダブル・ブレステッド。さて、どんなスーツが出来上がるか、今から楽しみで仕方ありません。完成したら、またリポートさせて頂きます!

 

batak NAKADERA

東京都新宿区新宿1-3-4 Gyoen R 6F

TEL 03-5919-6682

http://batak.jp/