From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

“人運”を引き寄せる、優しいお人柄
藤枝大嗣さん

Monday, August 10th, 2015

藤枝大嗣さん

株式会社エスディーアイ 代表取締役

interview kentaro matsuo photography tatsuya ozawa

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イザイア、マリネッラなど、イタリアものを中心に、幅広いインポート業務を手がけられているエスディーアイ社長、藤枝大嗣さんのご登場です。かつてパンツブランドのインコテックスが日本に本格上陸したあたりからのお付き合いなので、もう20年近く存じ上げているファッション業界の大先輩です。ソフトで優しいお人柄は、お会いする度にほっとさせられます。

 

スーツはイザイア。コットン・コードレーン製で、軽いシャツのような仕立てを特徴とする“セーラー”というモデルです。

「実はコットンって目が詰まっていて、あまり涼しくないのですが、白やベージュなど、コットンならではの色出しが好きなのです。イザイアは私が27年前に独立して会社を立ち上げて、まず契約できたブランドなので、今でも恩義を感じています」

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シャツとタイはダークノット。これはマリネッラがプロデュースしているブランドですが、クラシックを守る本体と違って、より遊びの利いたコレクションとなっています。

「スタイリストの祐真朋樹さんがナポリのマリネッラを訪ねた時、わざわざ6cm幅の極細タイをオーダーされたのです。そして、それを剣先が擦り切れるまで愛用してくれた。そのことを知った社長のマリネッラ・マウリツィオが感激し、『何か新しいものを』と思ったことが、ブランドのスタートのきっかけでした」

 

チーフに見えるのは、実はマリネッラ製のメガネケース。

「マリネッラのネクタイの残布で作ったメガネケースです。残布なのでなかなか入荷せず、入ってもすぐに売り切れてしまう人気アイテムなんですよ。こうやって胸ポケットに差すと、チーフのように見えるのです」

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トレードマークでもあるメガネはトム・フォード。

「白山から始まって、オリバーピープルズ、アラン ミクリなどいろいろかけて来ましたが、現在はトム・フォードを愛用しています。ウエリントン・タイプではシルエットが一番キレイだと思います。バリエーションも多いですし」

 

時計はアンティークのロレックス・プリンス。

「7年前、55歳の誕生日にパリのアルニスで買いました。当時はアルニスの中に、アンティーク時計のコーナーがあったのです」

薄型で、シャツの内側に収まるところもお気に入りの理由だそうです。

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シューズは、松田智沖社長率いるジョン ロブのロペス。サンプルなので、これ一足しかないモデルだとか。

「彼は明治学院の後輩なのです。ちなみにUAの重松さんは先輩、ラコタの血脇さんは同輩です」

 

ソックスはパラティーノ。マーセライズド加工された細番手のコットンが気に入り、半ダースごとに9色もオーダーされたとか。

「すべて無地ですが、紺で2色、黒、焦げ茶といったベーシックなものの他に、レッドやパープルなども持っています。なかなか身につける機会はありませんが、真っ赤なバッグやベルトなども持っているんですよ」

 

真っ赤なアイテムを差し色として使うテクニックは、故・桃田有造さんに影響されたのだといいます。桃田さんはかつてコロネット商会会長を務めていたファッション界の大物で、ダンヒル、ジバンシィ、チェルッティ、エミリオプッチなどのブランドを初めて日本に紹介した人として有名です。そのトレードマークは、真っ赤なソックスでした。藤枝さんは、新卒でコロネット商会に入社し、薫陶を受けていたのです。

「桃田さんには、いろいろなところへ連れて行ってもらいました。岡田大貳さんがやっていたキャステルや、乃木坂にあったボルサリーノというイタリア料理店など、当時の私にとって敷居の高いところばかりでした」

 

桃田さんには、実は私もお会いしたことがあります。私の25年に亘る編集者人生のなかで、日本人としては三指に入るお洒落な方でした(ちなみに後の二人は、作家の落合正勝さんとミュージシャンの加藤和彦さん)

 

「その後バイイングも任されるようになり、ジバンシィ・ジェントルマンのデザイナーやアルニスの当主ジャン・グランベールさんといった一流の人たちと、ヨーロッパ中の工場を廻りました。その時の経験が私のベースとなっているのは、間違いありません」

 

前出のイザイアはアルニス当主の推薦があったから、契約できたのだといいます。そういう“人運”を引き寄せる力も、優しいお人柄あってのことでしょう。