From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

芸能界でも1、2を争う洒落者
峰竜太さん

Thursday, April 25th, 2019

峰竜太さん

俳優・タレント

text kentaro matsuo   photography natsuko okada

 

 

 芸能界でも1、2を争う洒落者、峰竜太さんのご登場です。『アッコにおまかせ!』や『出没!アド街ック天国』など、毎日のようにテレビに出ておられますが、その着こなしは、いつも超一流です。男の着こなしのお手本と言えますね。しかも驚いたことに、ほとんどのタレントさんが衣装はスタイリストまかせのなかで、峰さんはすべてご自身でスタイリングなさっています。

 

「洋服を見たり、コーディネイトを考えるのが大好きなのです。楽しくて仕方がありません。ベッドの中で眠る前に『明日はコレとコレを合わせようかな・・』とよく考えています。だからスタイリストを使おうなんて思ったことは一度もないですね」

 

ご商売柄、買い物の量もハンパではありません。

 

「最低でも週1回は丸の内や六本木のセレクトショップを巡り、新しい服を仕入れます。それから年に1回、イタリアへ買い物旅行に行きます。まずフィレンツェのリベラーノ&リベラーノへ行って、マネージャーの大崎さんに街を案内してもらいます。ステファノ・ベーメル、マンテラッシ、ボレッリなどは外せません。ミラノではラルディーニやエラル55に立ち寄ります。アッコの収録が終わった月曜日に日本を出発し、やはり生のレギュラーがある土曜日までに帰ってくる。結構忙しい旅ですよ(笑)。買い物で迷ったことはありません。コレがいいと思ったら、一瞬で決めてしまいます」

 

 そのコレクションは素晴らしいの一言。スーツ50着、ジャケット100着、パンツ50本が、豪邸の専用ワードローブに整然と並べられています(これでワンシーズンなので、実際の所有数は倍です)。さらにシャツ50枚、タイ200本、靴100足など。

 

「毎シーズン30着ほど新しいものを仕入れますから、余った分は人にあげてしまいます」

 

 かくいう私も、かつてメンズ・イーエックス誌で峰さんの連載をやっていたため、何着か洋服を頂いたことがあります。それらはまるで新品のようでした。

 

 

 ネイビーのスーツはガブリエレ パジーニ。最近のお気に入りだそうです。

 

「ここの服は主張が強いのですが、テレビだとそれくらいでちょうどいい。どこか押し出しがないと、画面映えしないのです。テレビではベーシックばかりだと埋没してしまいます。ちょっとだけ前に出ないと」

 

 タイはポール・スチュワート。

 

「スーツの色がシックなときは、どこかにひとつ明るい色を入れるようにしてします。特にこれから夏にかけては、できるだけ明色を身に着けるよう心がけています。テレビでは季節感も大切ですから」

 

 さすが、テレビ・メディアというものを知り尽くしています。

 

 シャツは大和屋シャツ店で誂えたもの。創業140超を誇る銀座の名店です。

 

「シャツはオーダーが多いですね。カジュアルなシャツはドゥ・ワン・ソーイングで作ってもらうことが多いかな」

 

 

 時計はヴァシュロン・コンスタンタン、トラディショナル・オートマティック。

 

「ずいぶん前に、銀座のアワーグラスで買いました」

 

 アンダーステイトメントなところが堪らないですね。このへんのさじ加減が、他の芸能人の方とは違います。

 

 ブラウンのシューズはステファノ・ベーメル。ベーメル氏とは生前から親交があったそうで、氏の死後も、ずっと通っているそうです。

 

「私の装いの基本は“アズーロ・エ・マローネ(ネイビー×ブラウン)”です。コーディネイトに、必ず取り入れるようにしています」

 

 メンズ・ファッションの基本をすべておさえつつ、芸能人らしい華やかさを添えた、完璧な装いです。

 

 

 なぜここまでお洒落になったのですか? と間抜けな質問をすると、

 

「私の出身は長野県の下條村という田舎です。高校生の頃は学生服をオーダーメイドしたりして、それなりにお洒落に興味はあったのですが、東京に初めて出て来て、周りが皆カッコいいので愕然としました。田舎者であるというコンプレックスから、ファッションを意識するようになったのだと思います。モデルをやりながらVANや三峰、タカキューなどで洋服を買っていました。スタートはトラッドでしたね」

 

 その後、“石原プロモーション”に入り、刑事ドラマ『大都会』に出演、俳優としての階段を駆け上ります。

 

「『大都会』では“サル”という愛称の肉体派刑事の役でした。そこで自分で色々と考えて、衣装は黒いツナギを着ることにしました。刑事がツナギを着ているのは本来おかしいのですが、格闘技も駆使するような刑事だったので、それでいいと思いました。そうしたら(松田)優作さんから『お前もようやくわかってきたな・・』とホメてもらえたんですよ(笑)」

 

 続編の『西部警察』では“イッペイ”として明るくコミカルなキャラを演じました。

 

「まわりには渡(哲也)さんや館(ひろし)さんなど、立っ端があってカッコいい人ばかり。そこでどうやって自分のキャラを立たせるか考えて、丸メガネにブレザー、蝶ネクタイのスタイルに落ち着いたのです。自分で自分をプロデュースすることが好きだったのですね。その後ある人から『名探偵コナンの先駆けですね』といわれました(笑)」

 

 昔の俳優さんは、皆自分のスタイルにこだわっていたといいます。

 

「優作さんに『そのサングラス、かっこいいですね』と言ったら『原宿で500円で買ったヤツだよ』とかわされました。それでいて優作さんは、自らのスタイルには、ものすごくこだわっていましたね。こだわりすぎて撮影の途中でヘアスタイルを変えてしまい、ひとつの話の中で、ヘアスタイルがバラバラになってしまったこともありました(笑)。そういった先輩に学んで、私なりのファッション観が出来上がったのです」

 

 そんな峰さんに、ファッションにとって一番大切なことは何か? と訪ねると・・

 

「それは“体”ですね。結局、服って体の延長なのです。私もトレッドミルで30分、エアロバイク30分の運動を毎朝、欠かさず行なっています。専属トレーナーのいるジムに行って、体幹を鍛えることもしています。そのお陰で、サイズは常に(イタリアサイズで)48。袖と裾以外はどこも直さずに着ることができます。やっぱりキレイなジジイでいたいじゃないですか。私は白髪はほぼなく、髪の毛は多すぎるので、いつも床屋で梳いてもらっているほどです」

 

 これは1952年生まれという事実を考えると、驚異的なことです。

 

 お話を聞いていると、お酒もタバコもやらず、ひたすら仕事と体作り、そしてファッションに打ち込んでいる、真のプロフェッショナルの姿が浮かび上がってきます。

 

 第一線でずっとご活躍なさっている方には、やはり理由があるのですね。

 

 

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