From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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福田洋平さん

福田洋平さん

 シューメーカー

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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靴職人の福田洋平さんのご登場です。今や、日本を代表する靴職人の一人と言えるでしょう。北青山にあるショップには、世界中から人が訪れます。顧客の半数以上が外国人だそうです。

「フランスとアメリカ、そしてイギリスからの方が多いですね。あとはシンガポールと香港。ブログやSNSなどで知って、来られるようです」

なるほど、こういう話を聞いていると、雑誌屋としては「時代は変わったなぁ」と思います。

「先日、ロンドンでスーパートランクショーという催しがあって、各国の職人たちが集まったのですが、外国人が皆、口を揃えて『日本のモノは世界一だ』と言ってくれました。これは嬉しかったですね」

そうです。今や日本は職人大国です。大勢のリッチな外国人たちが、日本へスーツや靴を作りにやって来ます。日本人は手先が器用でマジメなので、英国やイタリアで学んだ技術に磨きをかけ、本家よりさらにいいモノを作ってしまうのですね。

福田さんも、

「どうがんばっても1カ月に7足が限度なのですが、注文はそれ以上に入ります。納期がどんどん伸びてしまって、申し訳ない」

 と嬉しい悲鳴を上げています。

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スーツは、近藤卓也さん率いるヴィックテーラーで、8年ほど前に作ったもの。

「ヴィックテーラーでは、もう5着ほど作りました。トレンドを追わず、いい意味で普通な服作りをされているところが好きなのです。今日はスーツですが、普段はジャケットスタイルが多いですね。ボウズにヒゲでスーツだと、初めて会う人に怖がられてしまうので(笑)」

あ、私もスーツを着ていると、いつもその筋の人に間違えられます。

 

シャツは、水落卓宏さんのディトーズでオーダーしたもの。

「シャツって一番ビスポークのメリットが、わかりやすいものだと思います。既製品のシャツは、どこかが合っていると、どこかが合わないでしょう?」

 

タイはドレイクス。

「実はドレイクス当主のマイケル・ヒルさんにも靴を作らせてもらい、東京に来ると必ず寄ってくれるのです。その際ドレイクスのタイを、2本ずつお土産に持って来てくれるんです」

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シューズはもちろん、ヨウヘイ・フクダ。ヘリテージ・コレクションの“セレスト”というモデルです。さすがに美しいですね。

「私の靴の特徴は、英国の第一次大戦前の靴をモチーフにしているところでしょう。今では英国靴というとエドワード・グリーンの202のような、ぽってりとしたラストを思い浮かべる方が多いと思いますが、それは第一次大戦が始まって、靴の大量生産が必要になってからです。それ以前のエドワーディアン時代(エドワード7世在位時代=1901~1910年)は、スマートなスクエアトゥが主流でした。私はこの時代が、靴作りにおける、ひとつの頂点だと思っています。数えきれないほどの職人たちが工房を構え、互いに腕を競っていたのです」

 

福田さんが靴職人になるきっかけも、この時代に作られた一足の靴だったそうです。

「英国ノーザンプトンの靴博物館で見た、一足の黒いストレートチップに目が釘付けになりました。『人って、こんなに綺麗なものを作れるんだ』と感動したのです。その瞬間に靴職人になることを決心しました。その靴は今でも、たまに見に行くんですよ。作り手は“アンノウン(わからない)”となっていますが」

 

そして作った渾身のサンプルは、英国で当時通っていた靴学校の先生を驚嘆させ、「お前はこの道を行くべきだ」と言わしめたほど。その実力が認められ、本場の一流処クレバリーやグリーンのビスポークのアウトワーカーなどを務めました。6年後に帰国して、中野に工房を構えます。しかしそのスタートは、決して順風満帆ではなかったようです。

「最初の工房は中野・鷺宮の自宅アパートの一室で、4畳半しかありませんでした。そこで接客をし、靴を作っていました。でも、ぜんぜん注文がないので、一日中寝ていることもありました(笑)」

 

しかし、いいモノを作っていれば、必ず評価してくれる人はいるもの。ビジューワタナベという時計店の店頭にサンプルが置かれたことがきっかけで、評判が評判を呼び、前述のような大盛況へと至ったわけです。

 

さて、ここでオマケ話をすると、福田さんは決して、若い頃から本格靴職人を目指していたワケではなかったそうです。そこにはいろいろな運命のイタズラがあったようで・・・この話は面白いので、もし行かれる機会があったら、採寸の際に突っ込んでみて下さいね!

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Yohei Fukuda

Mater Styling ¥280,000〜

Bespoke ¥430,000〜

東京都北青山2-12-27 BAL青山2F

Tel.03-6804-6979

https://www.facebook.com/yoheifukudashoemaker/

https://www.instagram.com/yoheifukudashoemaker/

檀正也さん

檀正也さん

 サルト代表取締役 檀正也さん

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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日本に“高級お直し店”という存在を広めた、サルトの社長、檀正也さんです。

高身長にスリムな体型。オーダーメイドのスーツがよくお似合いです。

「高校生の頃は、もっと細かった。身長180cmに対して、体重は50kgちょっとしかなかったのです。だから、どんな服を買っても、ダブダブになってしまう。そこで買った洋服は、すべて直してから着ていました。どこをどう直すか、いつも自分で工夫していました。その頃から“お直し”が大好きだったのです」

大学卒業後、アパレルメーカーへ就職し、企画を担当するも、どうしても興味は、“作る”ことよりも“直す”ことへ向いていってしまったそうです。

「せっかく大枚叩いて買った洋服なのに、1シーズンで着られなくなってしまうのは、おかしいと思っていました。ヨーロッパなどでは、当時からお直しの文化がありましたからね。また私は実は、サルトの前に一つ会社を立ち上げているのですが、そこでは環境にやさしい洗剤や香り、防虫剤などを扱っていました。若い頃から、そういったことに関心があったのです」

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スーツは、韓国のB&テーラーによるもの。サルトのショップでも扱っています。

「スーツ職人だった父親と、イタリアで修行した息子2人がやっているテーラーです。サルトの支店をソウルに開く際に、たまたま見つけて惚れこみました。とにかく柔らかくて着心地がいい。また、すごい数のパターンを持っていて、デザインがとてもいいんです。決まり切った形しかやらない普通のテーラーとは、全然違います」

 

シャツは、サルトのオリジナル・オーダーメイド。カラーピンは後付けです。

 

タイは、加賀健二さんが手がけるフィレンツェのセブンフォールド。最近いろいろなところで見かけます。

「加賀さんとは、10数年のお付き合いになりますね。今回もいいコレクションでした」

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時計はアンティークのブローバ。かつては非常にメジャーだった、アメリカの時計メーカーです。

「なんでも古いものが好きなのです。クルマもそうで、現在の愛車は、フィアット1200カブリオレという1965年式のイタリア車です。これがもう、壊れる壊れる。この間は走行中に、ドアノブが落ちました(笑)。現在も修理中です」

もう、なんでも直すのがお好きなのですね。

 

 シューズは、やはりフィレンツェの深谷秀隆さんのイル・ミーチョ。このブランドも、もはや世界中の洒落者の定番ですね。

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「サルトを立ち上げたのは、2000年のことでした。当時はセレクトショップがこぞってイタリア製の服を扱っていました。しかし今と違って、その作りはひどかった。イタリア人が作る服はいい加減で、袖がねじ曲がっていたり、マニカ・カミーチャの雨の分量が左右で違っていたり、そんなことはしょっちゅうでした。そこで、ビジネスを立ち上げるなら、そこを狙うしかないと思ったのです」

サルトが登場するまでは、お直しは “町のお直し屋”に持ち込むしかありませんでした。しかし、そういった店はお洒落とは無縁だったので、納得いく仕上がりからは、ほど遠かったのです。そこへ檀さん率いるサルトが現れて、「いい服を、少しずつお直ししながら長く着る」ということが、ようやく一般的になったのです。

現在では発祥の地、福岡をはじめ、東京、名古屋、札幌、そして韓国ソウルなど、各地にショップを展開されています。

 

さぞや、もうかっているでしょう、と聞くと、

「全然もうかりません」とのお答え。

「この仕事は、高いものを扱っているので、決して手は抜けない。そして、凝れば凝るほど、もうからないのです。洋服なら安いラインも作れますが、お直しでは、そうはいかないでしょう?」

なるほど、確かに。

しかし、そういう檀さんの顔は実に嬉しそうです。この方、根っから「直す」ことが好きなのですねぇ。クレイジー・ダイヤモンドみたいです。

 

<サルト銀座店>

東京都中央区銀座2-6-16 第二吉田ビル2F・3F

Tel.03-3567-0016

11:00-19:30(日・祝11:00-19:00)最終受付は18:30(日・祝 18:00)

http://www.sarto.jp/