From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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野口強さん

野口強さん

スタイリスト、マインデニム・ディレクター

text kentaro matsuo photography natsuko okada

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カメラマンの岡田ナツ子が、なにやらニヤニヤ、モジモジしています。今回の撮影は、業界でも有名なイケメンなので、嬉しいのですね。やれやれ旦那がいるくせに、まったく困ったものですが、その気持ちはわからないでもありません。

野口強さんといえば、数々の雑誌や広告のディレクションをこなし、多くの芸能人のスタイリングを担当する超売れっ子スタイリストです。長身痩躯で、かつてはモデルとしても活躍なさっていた人なのです。

その彼が、今夏新しいデニム・ブランドをローンチして、話題になっています。それが“マインデニム”です。

 

「小さい頃から、デニムばかり履いて来ました。小学校4、5年生の頃には、近所のジーンズ屋に入り浸っていた記憶があります。その後ディスコで働いたり、アパレルでバイトしたり、資生堂の花椿のモデルをやったりしていましたが、自分が着るものは一貫してジーンズにTシャツでしたね。現在では、ジーンズは400本くらい持っています。ジーンズならば、ありとあらゆるものを試してきたと言えます」

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そんな野口さんがディレクションしたデニムですから、さぞや諸々凝っていると思いきや、デザインはとてもシンプルです。

 

「あくまでもシルエット重視、そして穿き心地のいいものを作りたかった。自分の周りには、スポーツ選手やダンサーなど、体型が他とはちょっと違う人が多い。ウエストは細いのに、腿がやたら太かったり。マインデニムはそういう人にも穿いてもらえるものを目指しました」

 

もう一つの特徴は、デニムなのにオーダーメイドが可能なところです。自社ファクトリーまで持っているとか。

 

「海外だとデニムのバリエーションってすごく多いのに、日本だとあまりない。そこでマインデニムでは、好きなサイズ、デザインのデニムをオーダーメイドで作れるようにしました。ボタンやリベットの素材なども変えられます。リアルシルバーやゴールドさえ選べますよ。ゴールドの場合、値段は100万円以上になりますが(笑)。それからデニムのスーツやタキシードも企画しているんです」

 

まさに今までにない、新しい時代のデニム・ブランドです。

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Tシャツはアンダーカバー。サイドにポケットが付いているので、とても便利だとか。

「ほとんど毎日、Tシャツばかり着ています。冬はこの上に、ライダースなどのアウターを羽織る。えっ? 持っているTシャツの枚数ですか? たぶん数千枚はありますね。もう見るのも嫌になります。それでも昨年、半分は処分したんですが(笑)」

 

時計はトキオ・クマガイ。1980年代に一世を風靡したブランドです。

「この時計は、当時のものです。昔買って、ずっと大切に使っていたのです。実は数年前に壊れてしまったのですが、同じモノを友人から譲ってもらって、当時のベルト職人に、ベルトとバックルだけ取り替えてもらったのです」

なるほど、ひとつのものを気に入ると、とことん付き合うのが“野口流”なのでしょう。実は私も、同じ時計を持っていました。これは猫シューズと並んで、今は亡きトキオさんの傑作だと思います。

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ブーツは、ラグス マックレガーとノンネイティブのコラボ。今夏購入したばかりです。

 

ジーンズは、もちろんマインデニム。スリムなシルエットですが、ストレッチ素材で「座敷でもラク」と。やっぱり、ディレクター本人が、一番似合いますね。

 

野口さんは、マインデニムの細身のモデルはほとんどを持っているそうですが、唯一ホワイトジーンズだけは、なかなか手が出せないそうです。

「いつも『今日は穿こう』と思うのですが、どうも気後れしてしまって。前にテレビで“20代、30代の女の子がキライな男のファッション”という番組をやっていて、その3位が“白いズボン”だったんです(笑)」

 

名立たるモテ男が、そういうことを気にしているところが面白いですね。そんな気さくで飾らない人柄が、この方の最大の魅力でしょう。

 

「マインデニムは、服好きから、何を着ていいのか、まったくわからない人まで、いろいろな人に穿いて欲しいのです。とにかく一回ショップに足を運んで、試着してみて下さい。それだけで帰ってもいいからさ(笑)」

 

私の目にもマインデニムは、シルエットの美しさと、素材のよさ、縫製の巧みさを併せ持った、希有なブランドに映りました。今度の休みは、千駄ヶ谷までジーパン・ピクニックされることをオススメします!

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写真のデニムは最も定番なストレートスリム・タイプ。カラーはインディゴとブラック。

各¥35,000 Minedenim http://minedenim.jp/

2-5-8 IWAI BLDG. JINGUMAE, SHIBUYA-KU, TOKYO,

TEL.03-6721-0757

直井茂明さん

直井茂明さん

シャロン クリエイティブ・ディレクター、サルトリア

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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  テーラーの直井茂明さんのご登場です。私が最近ちょくちょく顔を出している骨董通りの“シャロン”にて、注文服を作っています。彼のキャリアのスタートは、私のお気に入りの(腐れ縁の?)テーラー、ペコラ銀座でした。専門学校を卒業してからすぐに入社し、服作りの面白さはペコラ佐藤から習ったといいます。直井さん曰く、

「佐藤さんは、大変厳しい人でした。彼がいるとピリピリして、現場が引き締まるようでした」ということですが、本当かね?

 

その後、手縫いに力を入れている縫製工場で、水落卓宏さんに師事したり、大手アパレルメーカーなどを経て、伊勢丹で自らのブランドを展開し、シャロンのオープンにも参加しました。

私と同世代のペコラ佐藤が1967年生まれなのに対して、直井さんは81年生まれ。一回り以上も下の人間が、もはや「巨匠」と呼ばれつつあるのですから、われわれも年を取るわけです(笑)

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 ジャケットは、もちろん自分で作ったもの。生地は、シルク×ウールのカノニコです。

「初めて生地を見た時に、このありそうでない小豆色に、一目惚れしました」

直井さんの服の特徴は、袖や肩のいせ込み量の多さ。キレイに盛り上がった肩山は、ひと目でハンドメイドの仕立て服だとわかる意匠です。

 

コットンパンツも自ら仕立てたもの。

「スーツとして作りましたが、こういう生地だと、上下バラバラでも着れますよね」

 

シャツはジ・イングレーゼ、タイはジュスト・ビスポーク。ベルトはティベリオ・フェレッティ。どれもシャロンで扱っているものです。

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 時計はゼニス。

「初めて買った、ちゃんとした時計です。シンプルなところが気に入りました」

ローマ数字の文字盤が美しいですね。

 

シューズは、丸山貴之さんによるパターンオーダー。

「一足目でしたが、まったくストレスがなく快適です。シボのあるこの革が気に入ったのです」

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 直井さんは、かつて人生の進路について、大いに迷ったことがあったといいます。

「幼い頃から、ファッションは大好きだったのですが、それと同じくらい料理をすることが好きでした。家の台所には、小学校の頃から入っていました。だから洋服の道に進むか、料理の道に進むか、真剣に悩んだことがありました」

悩み抜いた結果、洋服を本業とし、料理は趣味とすることにしたそうです。

 

「私の実家は茨城にあったのですが、目の前が大きな池だったのです。そこで釣りを憶えました。釣って来た魚を捌くようになって、だんだんと料理に夢中になって行きました。今でも魚を丸ごと買って、身はサシミにして、骨でダシを取って吸い物を作る、といったことをやっています」

 

なるほど、これは本格派のようです。そこで「一番得意な料理は?」と聞いてみると、

「それはスパゲティ・ボンゴレです。イタリアン、特にパスタ類は得意で、クリームたっぷりのソースなども作るのですが、実はボンゴレのようなシンプルなものほど、難しいし奥が深いのです」と。

 

「それでは、直井さんの作るスーツを料理に例えると、スパゲティ・ボンゴレですか?」と訪ねると、

「そうですね。シンプルかつ奥深くありたいと思います」と。

まさにクラシック・スタイルの正鵠を射たお答えですね。

実は今回、私も一着作ってもらったのですが、その「お味」のほうは、追々別の場にてリポートしたいと思います。