From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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松木隆志さん

松木隆志さん

精神科医

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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アメリカ、ニューヨークで精神科医を営まれている松木隆志さんのご登場です。マウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院にて、精神科救急部の部長をなさっています。そこは24時間体制で、精神に異常をきたしてしまった人たちが担ぎ込まれてくる、つまりはERの精神科版です。

「最近ではニューヨークでも脱法ドラッグが流行っていて、救急搬送されてくる方が急増しています。中には極度の興奮状態で大暴れをするような人もいますよ。襲われたりして、スタッフが怪我をする危険があるため、救急外来には何人もガードマンがいますし、必ず金属探知機で検査をしてから中に入れるようにしています」

ただでさえヤバそうなニューヨークで、本当にヤバい人たちを相手にしているとは、大変なお仕事です。その現場は壮絶でありましょう。

 

プライベートオフィスでは一般外来診療とカウンセリングも行っており、こちらで診療しているのは普通の方たちばかり。日本人の患者さんが多いとか。

「患者さんは、8割が女性です。駐在員の妻の方が多いですね。言葉ができず、やることもなく、狭い人間関係の中で疲れ切ってしまっている。『旦那の上司の奥さんに嫌われている』と悩んでいたりね。男性の場合は、金融マンや商社マンが多い。ニューヨーク在住のビジネスマンは、とにかく朝から晩まで働きづめ。それで心のバランスを崩してしまう」

そんな彼ら彼女らを相手にするときは、医者のユニフォームである白衣は着ないのだとか。

「アメリカの精神科医は白衣を着ません。白衣を着ると、患者さんに威圧感を与えてしまうんです。ツィードなどのジャケットに、ネクタイをするのが一般的です」

 

松木さんご自身も、ジャケット・スタイルの日がほとんどです。そしてそのすべてを、VESTA by Johnford(ヴェスタ バイ ジョンフォード)で仕立てています。美人マネージャー、北川美雪さんがいることで有名な、銀座のテーラーです。

「私はニューヨークでは洋服は買いません。テーラーはありますが、どこもフルオーダーがメインでとても高い。それにアメリカだと大きめに仕上がってしまうことが多い。VESTAのように手頃な価格で、着心地がよく、キレイなフィットのものが買える店はないのです。それに北川さんのセンスも信頼できますし」

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チェックのジャケットはゼニア製のシルク×ウール地を使ったもの。

コットンのパンツはドーメル製の生地で作られています。

「小さなこだわりは、パンツのサイドポケットを縫い閉じてしまうこと。座ったとき開いてしまうことがなく、ラインがキレイに見えるのです」

シャツはアルビニの生地で。持っているシャツは、すべてダブルカフスだそう。以上すべてVESTAで仕立てたものです。_UG_2993

カフリンクスはティファニー。学生としてニューヨークに留学したときに購入したもの。

「かつてはジャズ・ミュージシャンを志していたこともあったのです。今でも50~60年代の黒人ジャズメンの着こなしに憧れます。だからカッチリした格好が好きなのです」

 

タイはポール・スチュワート。

「アメリカらしくなく、ヨーロッパっぽい」ところがお気に入り。

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シューズはクロケット&ジョーンズのハンドグレード。これもニューヨークで買いましたが、アメリカでは州ごとに税制が違っていて、マンハッタンで買っても、自宅のある隣州のニュージャージーへ直送すれば、衣料品は消費税がかからなくなるのだとか。

「服は日本、小物はニューヨークが多いかな」と。

 

コーディネイトのポイントは、ピンクとグリーンという反対色を組み合わせたところ。往年のプレッピーを彷彿とさせる配色ですね。

 

ファッションの取材だったにもかかわらず、ニューヨークでの精神科医としての話があまりに興味深く、ついつい聴き入ってしまいました。そのすべてを紹介できないのが残念です。松木さんの日常をドキュメンタリー番組にしたら、さぞや面白いことでしょう。

 

イーサン・ニュートンさん

ブライスランズ オーナー

text kentaro matsuo photography natsuko okada

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THE RAKEのブログでもおなじみ、カメラマンとしても活躍中、そして世界中のスナップサイトでも撮られまくっている、イーサン・ニュートンさんです。とびきりのファッションセンスと、一目見たら忘れられない風貌で、すっかり有名人となりました。

彼が東京・原宿に開いたショップ、ブライスランズは、東京のお洒落な人たちの間で、いま話題のスポットとなっています。ロンドンの傘、香港のシャツ、アメリカのベルト、東欧の靴・・・他店とは一線を画する独自の品揃えが、実に新鮮なのです。何を隠そう、私自身もここでばかり買い物をしています。

 

リネンのダブルスーツはブライスランズがダルクオーレに別注したもの。

「ウチのスーツの特徴は、シェイプが緩くて、丈が長くて、パンツの股上が深いということ。ゴージラインも低めです。トレンドはまったくケアしていません。1920~40年代くらいのスタイルですが、なにしろ私はコレが好きなのです」

この潔さが、この店の最大の魅力です。

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シャツはブライスランズがアスコット・チャンに別注したもの。D.J.アンダーソンの200番手の生地を使っています。

タイは、ブライスランズ・オリジナル。ヴィンテージの生地をリメイクしたファブリックが使われています。

 

ポケットチーフは、シモノ・ゴダール。

「私はここのリネンのチーフしかしません」

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金無垢の時計は、1940年代のロレックス・バブルバック。

リングは、自らのファミリーのシグネチャーリングです。外国の方がこういうものを身につけると、キマりますよねぇ(逆に日本人だとなんだかヘンです)。

 

ゴールドのフレームが美しいメガネは、50年代のシュロンのデッドストックです。

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ベルトはアメリカのヴィンテージのシルバーバックルに、クロコダイル・レザーを合わせたもの。ブライスランズのオリジナルで、もうすぐ発売となるそうです。

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 シューズは、ルーマニアのサン クリスピン。ワンアイレットのカーフモデル。ブライスランズでは、サン クリスピンのオーダーを随時受けていて、私も先日一足作ったばかりです。

 

「この夏のテーマは“50年代にイタリアに旅行に行ったアメリカ人”ということ。つまりテイストはアメリカですが、作っているのは、イタリアの職人たちなのです」

 

そういうイーサンは、実はシドニー近郊に生まれたオーストラリア人です。1980年生まれというから、意外と若いですね(36歳!)

「裁縫が得意だった母の影響で、小さい頃からファッションは好きでした。ミリタリーやカウボーイ、スポーツといった、いわゆる“コスチューム”に興味があったのです。昔のハリウッド映画にも夢中になりました。『ファニーフェイス(パリの恋人)』、ヒッチコックの『ロープ』、ハンフリー・ボガートの『カサブランカ』、『マルタの鷹』など、どれも素晴らしいです。ティーンエイジャーになると、兄と一緒にデニム、ミリタリー、ワークといったアイテムをたくさん買い込みました」

 

そして20歳の時初来日し、あのエヴィスジーンズに入社します。

「エヴィスでは、アメリカン・クラシックについて学びました。ヴィンテージ501についての知識やどうやってジーンズを穿くかなど、本当に勉強になりました」

うーむ、オーストラリアの青年が、日本において、アメリカ文化を学ぶ・・・いやはや、これこそ“グローバル化”ということでしょう。

 

いったんオーストラリアに戻った後、香港でジ・アーモリーの立ち上げに参加、ラルフ ローレンのシニア ディレクターも務めました。そして今年、満を持して、自らのショップを東京に立ち上げたというわけです。

 

国境と文化の壁を軽々と超えて、独自のスタイルを追求するイーサンから、

ますます目が離せません。

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