From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

Posts in the category

MENU

仙田剛さん

仙田剛さん

株式会社アイネックス代表取締役

interview kentaro matsuo photography tatsuya ozawa

_UG_3241

 ネクタイ業界で売り上げナンバーワンを誇るアイネックスの社長、仙田剛さんです。今では、ほとんどのセレクトショップで、同社のタイが売られています。

人気の秘密は、クオリティの高さはもちろん、トータルでファッションを捉え、その中の一アイテムとしてタイを提案しているところでしょう。要するに、ここのタイは“カッコいい”のです。そして、そんなタイをプロデュースする社長も、卓越したファッショニスタです。

 

スーツは、フィレンツェのリベラーノ&リベラーノ。アイネックスは同社のタイのエージェントをやっていました。使われているのは、英国のヴィンテージ生地です。

「アントニオ(リベラーノの店主)の人間性が好きなのです。あまりイタリア臭くなくて、オールデンのような靴にも合わせられるところも魅力です。私のような丸い体型にも合うのです(笑)。ええ、スーツ、ジャケットはリベラーノが多いですね」

と相当な惚れ込みようです。すでにリベラーノのス・ミズーラは、スーツとジャケットを合わせて、25着~30着ほど所有しているそうです。

_UG_3270

シャツはナポリのアヴィーノ。ウチのユーコー・フジタも「世界一のシャツ」と言って憚らないブランドです。

「リベラーノのシャツをここが作っていたのが、きっかけです。カルロリーバの生地を使って作っています。私も今までいろいろなシャツを着てきましたが、ここのものは着心地が抜群にいいのです」

 

タイはロバート・フレイザー。アイネックスのオリジナル・ブランドです。

「フェルモ・フォサッティという生地屋が織ったガムツイルに、手染めでプリントを施したものです。作りは3つ巻きとなっています。こういうヴィンテージ感のあるプリントは、現在のトレンドなのです」と、さすがにネクタイのことになると、話が止まらないご様子です。

「ネクタイは毎日締めます。普段はジャケット・スタイルが多く、チノパンやジーンズも履きますが、ネクタイだけは必ず締めるのです」

お洒落な人はキレイなノットを作るために、何回もタイを結び直したりしますが、さすがに仙田さんのノットは完璧です。

_UG_3274

トレードマークの黒ぶちメガネは、オリバーピープルズ。

「手で削ったものです」というセリフにやられて、購入を決意したそうです。

 

ポケットチーフは、カルロリーバ。アイネックスが企画したものです。もちろんカルロリーバ製の生地=高密度のコットンリネンが使われており、エッジのハンドロールがとてもキレイ。一見なんでもない商品ですが、見れば見るほど存在感があり、私自身はこのチーフをとても気に入ってしまいました。

 

時計はセイコーのクレドール。50歳の誕生日を記念して購入したものだそうです。クォーツですが、非常に薄型でドレス・スタイルにぴったりとハマります。

_UG_3277

シューズはジョンロブ。この他に、オールデンやジャコメッティもお好きだとか。レザーものは、最近ではクロコなどのエキゾチック系に惹かれているそうです。

 

「今日のコーディネイトは、まずヴィンテージ調のタイを選んで、それに合わせてスーツを選びました。いつも、最初にタイをチョイスし、それから他のアイテムを合わせていきます。タイとは、その日の気分を一発で変えてくれるもの。きゅっと、うまくタイが結べると『今日はイケる』という気になり、テンションが上がります」

 

現在アイネックスは、東京・恵比寿にありますが、実は同社は、もともと“伊藤洋品”という金沢の会社で、ネクタイの他、加賀友禅などを扱っていたそうです。

「初代の社長が亡くなったとき、その墓前で『いつかきっと日本一のタイ屋にしてみせます』と誓ったのです。それからは夢中で働きました。しかしタイを作るのが本当に好きなので、ツラいと思ったことはありません。まるでプラモデルを与えられた子供のように、すべてが楽しかったのです」

そして気がつくと、本当に売上げ日本一を達成していたというわけです。

 

仙田さんは、その和やかな見た目に似合わず、熱い情熱を秘めた、辣腕社長なのです。

 

ウルティモ・ドラゴンさん

プロレスラー、TORYUMON代表

interview kentaro matsuo photography natsuko okada

002

プロレスラー、ウルティモ・ドラゴンさんのご登場です。本場メキシコ、日本をはじめ、アメリカ、カナダ、英国など、世界中を転戦している、超有名レスラーです。

私は、これまで何百ものお洒落な人に会って来ましたが、覆面を被った人を取材したのは、初めてのことです。プロレスという、一見ファッションとは無縁の世界に、ここまでお洒落な方がいるとは、正直驚きです。

 

スーツはローマのジョバンニ・チェレンターノのスミズーラ。

「よく顔を出しているイタリアのシガークラブの会長、サルバトーレ・パリージさんに進められたのがきっかけです。このクラブには、イタリアの大臣、議員、実業家など錚々たる人たちが所属していて、皆いいものを知っているのです。そこで『本当にいいスーツは、チェレンターノで作るものだ』と言われて、いきなり3着頼みました。ナポリのスーツも好きなのですが、ここのものはディテールの仕上げがキレイなのです。素材が麻なので、ポケットをパッチにして、遊び心を入れてみました」と洋服への造詣も、プロ級です

 

「自分の体型はウエストに比べ、二の腕や太ももが太過ぎて、プレタのスーツは入らないのです。また僧帽筋が発達しているので、スーツが肩にフィットしません。やはりオーダーメイドでないと、ダメなのです」

なるほど、プロレスラーならではのお悩みですね。ちなみに私自身の体型は、ドラゴンさんと真逆です。

005

シャツは、ナポリのルカ・アビタービレ。

「シャツもいろいろなところで作りましたが、着心地という点で、ここは素晴らしいですね。実は今着ているスーツのパンツの裏地には、このシャツとそっくりな生地が張ってあるのです。テーラーの『こういうシャツを着なさい』というメッセージなのかと思って、これを選びました。

 

タイは、やはりナポリのE.G.カペッリ。

「ナポリと言えば、某Mが有名ですが、本当のナポリ人はカペッリをするのです。今日の1本はマスクの色に合わせて、選んでみました」

008

 

そのマスクも、やはりオーダー品です。

「マスクは、メキシコの職人に作ってもらったものです。生地はロサンゼルスにて、自分で買ったものを持ち込みました。エンターティンメントの街、ロスには派手な生地がたくさん売っているのです。もともとはダンサーなどの衣装用の生地だと思います。実は日本にもマスクを縫う職人はいるのですが、やはり本場メキシコ製と比べると、何かが違いますね。これはちょうど、日本製スーツとイタリア製スーツの差のようなもので、感性そのものが違うのだと思います」

ちなみに、ドラゴンさんが消費するマスクの数は凄まじく、今でも月に10〜20枚程度は発注していて、これまでにのべ3000枚ほど作って来たそうです。 さらに言うと、オーダースーツは50着、タイは200本、シャツは50着、靴は150足ほどお持ちだとか。何事にもスケールが違いますね。

006

時計は、ナポリのカラブリット28というブランド。まるで懐中時計のようなデザインが面白いですね。クオーツですが、向こうではお洒落な人の間で秘かな人気だそうです。

 

カフスはメキシコのタスコという“銀の街”で買ったもの。

「コーディネイトに何かしらメキシコのものを取り入れるようにしています。これはアステカ時代のカレンダーがモチーフです」

009

シューズは、日本で作ったもの。

「みちのくプロレスに参戦しているので、よく東北へ行くのですが、盛岡に菅原靴店という地方らしからぬ素敵な店があって、そこで作ってもらったものです。イタリアでも何足かオーダーしましたが、自分の足には合いませんでした。しかし、これはとても履き心地がいい」

 

小さい頃からプロレス少年だったというドラゴンさんは、往年のレスラーたちのスタイルに憧れていたそうです。

「力道山やジャイアント馬場さんなど、昔のレスラーたちは公の場ではいつも、スーツでビシッとキメていました。特にカッコよかったのは、ミル・マスカラスです。全盛期の彼の写真を見てみて下さい。そのコーディネイトは完璧ですよ。来日の際は飛行機の中ではリラックスした格好でいても、機から降りる際には、いちいちスーツに着替えていたそうです」

 

日本に生まれ、メキシコで開花して、世界で活躍するウルティモ・ドラゴンさんには、昔のプロレスラーが持つ“粋”を継承していきたいという、熱き思いがあるようです。