May 2021

THOSE MAGNIFICENT MEN

素晴らしきヒコーキ野郎たち

text nick scott

1941年8月、第601飛行隊の6機のハリケーン戦闘機。

 初期の新兵のひとりに、ブライアン・タインという男がいる。彼は飛行機よりも馬を好み、内燃機関航空用エンジンを極端に嫌っていた。航空の知識にも乏しかったが、イートン校からオックスフォード大学を経てサセックス・ヨーマン連隊へ入隊する華々しい経歴と、機転の利く知性で補った。アクロバティック飛行を含めた基礎訓練を受けるとすぐ、彼はシモンズ複葉機スパルタンを620ポンドで購入し準備を整えた。

 銀行家の出身のトーマス・ロエル・エブリン・バルクレー・ギネスも初期メンバーのひとりだ。ギネスは、イギリス海軍の掃海艇カリプソを買い上げ、フランスの海洋学者ジャック=イヴ・クストーの海洋探検のために、年間たった1フランで貸し出していたことがある。

 また、イギリスで飛行機を所有した最初の民間人のひとりであり、サンドハースト王立陸軍士官学校で訓練を受け、アイリッシュガーズに所属していたこともあった。しかし、彼
が最も世間の注目を集めたのは3度にわたる結婚だった。1度目は、後にアーガー・ハーン3世の息子であるプリンス・アリ・カーンの元へと去ったジョーン・ヤード=バラー。2度目は社交婦人イザベル・バイオレット・キャスリーン・マナーズ。そして3度目もまた社交界の花だったドロレス・マリア・アガサ・ヴィルヘルミン・ルイーズである。

ふざけてばかりだった富豪部隊 第601飛行隊の男たちは、一生遊んで暮らせる特権を持つ怠け者ばかりだった。規則を破ってユニフォームの裏地を真っ赤なシルクにしたり、タイをブラックからブルーに変えたり。非番のときの趣味は、モーターバイクに乗ってポロをすること。あとはホワイツの新入りに対して、高所に上らせたりソーダ水をかけてびしょ濡れにしたりする奇妙な入会式を行うことだった。

1940年12月、ノースホルト王立空軍基地での第601飛行隊のパイロットたち。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39
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