August 2021

THE (DOUBLE) X FACTOR

染色体 XXだけのフォーミュラ

人種構成比を変えようという動きはホットだが、男女構成比はどうか。
2019年に発足した女性限定のフォーミュラカーレース「Wシリーズ」は、“モータースポーツの顔を変える”ことを変革のゴールに掲げる。
text nick scott

2019年7月6日、ドイツ・ニュルンベルクのノリスリンクで行われたWシリーズのレース。

 マリア・グラツィア・“レラ”・ロンバルディは、第二次世界大戦中の1941年、トリノ近郊の小さな村に精肉店を営む家の娘として生まれた。史上ふたり目の女性F1レーサーとなった彼女は、1975年のスペインGPの幕切れにマトラから降り立っても、自分が成し遂げた偉業に気がつかなかった。彼女が6位で25周目を走行していたとき、ドイツ人ドライバーのロルフ・シュトメレンが運転するヒル・GH1のリアウイングが脱落して観客席に突っ込み、5人が亡くなった。レースが中断したため、ロンバルディには1ポイントの半分の0.5ポイントが与えられた。その0.5ポイントが、今日に至るまで女性がF1レースで挙げた全得点である。

 レースの世界では女性はいつもグリッド後方からのスタートを強いられてきた。記録に残る初めてのレース(1867年の蒸気自動車レース)から30年も後になって初めて、女性たちは三輪自動車でパリの競馬場を周回するレースに参加した。その後いくつかの前向きな出来事はあったが、モータースポーツの分野でのジェンダー公正は大幅に遅れていた。

 スポーツ法専門の弁護士キャサリン・ボンド・ミュールは、2015年に息子を出産後、こう考えた。

「あらゆるスポーツで女性の活躍が目覚ましいのに、なぜ女性ドライバーは少ないのだろう?」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 40
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