Monday, January 19th, 2015

Plenty more Mr. Nice Guy

ヒュー・ジャックマン スペシャルインタビュー
ジェントルマンの気品とさりげない自信が漂うヒュー・ジャックマン。
スクリーンではカリスマ的な魅力を放ち、オフは穏やかで礼儀正しい一面をのぞかせる。
評判通り、ハリウッドきってのナイスガイなのだ。
original text nick scott text shiho atsumi photography gillles-marie zimmermann
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「監督が使いたがる俳優」になるまでには
少し時間がかかったけれど、
今はすべてが順調だよ。

 撮影現場の若手スタッフにスクラッチくじを配った男。グローバル貧困プロジェクトからブロードウェイ・ケアース(ブロードウェイの若手俳優のための健康保険)までさまざまなチャリティ活動に惜しみなく寄付する男。セットでは泣きだすより歌いだすほうが多い男。撮影前に息子を車で学校に送ることができるなら、撮影の控え室はトレーラーでなく、物干しロープに引っ掛けたタープでもいいと言える男。
 大スターでありながら気さくで、礼儀正しくオープン。ヒュー・ジャックマンがハリウッドで最も清廉な人物であることを証明する逸話は、枚挙に暇がない。堂々としてエレガント、189cmの長身でありえないほどハンサムな彼は、そのビジュアルだけでトップモデルにだってたやすくなれただろう。
だがナルシシズムとはまったくの無縁だ。
ワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)の人気格闘技番組『ロウ』でプロレスラーたちと対決することもあれば、最近では皮膚癌の予防を訴えるために、自らの鼻の手術跡に絆創膏を張った姿をSNSで発表したりもした。’08年にピープル誌恒例の「最もセクシーな男」に選ばれたときは、こんなジョークを飛ばしている。
「認めよう。僕らはものすごいキャンペーンを張ったんだ。自慢できたもんじゃない。ネガティブ・キャンペーンを仕掛けたのも僕らが最初だろうね。1年かけて、ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、マシュー・マコノヒーを追い落とした。僕は手段を選ばず準備したしね(笑)」
 その上に、18年間も続くおしどり夫婦の夫でもあり、「僕がいつも穏やかでいられる理由のひとつは、デボラ=リー・ファーネスとの幸せな結婚生活にあるんだよ。妻は人生の屋台骨なんだ」と、なんのてらいもなく公言する。
 大学4年のときに演劇に夢中になり演劇学校に通い始めたヒューは、自身曰く「クラスの劣等生」。ガソリンスタンドの従業員やパーティのピエロ、体育教師として働きながら、やっとのことでまともな役を手にしたのは26歳。決して早くない。さほど話題にならなかったそのドラマ『コレリ』で演じた役は、年上のカウンセラーに恋をする囚人で、その主演女優こそ13歳年上のデボラだった。
 翌年の結婚以来、マスコミはふたりの関係にほころびを見つけようと躍起になってきたが、いまだ功を奏してはいない。オーストラリアのテレビのトークショーに出演したデボラが口にしたヒューに対する唯一の不満はこうだ――「DIYが壊滅的に下手くそなこと」。「妻は僕がもっとろくでなしならいいのにと思っているよ」と、ヒュー・ジャックマンは笑う。
 巷の評判は「ナイスガイ」からぶれることはないが、スクリーンの中で見せる顔のバラエティの豊かさには目を見張るものがある。例えば映画『タロットカード殺人事件』でヒューを起用したウディ・アレン監督は、彼をケーリー・グラントに例えてこう評する。「粋で魅惑的でとびきりハンサム、好感が持てる上に、ダンスや身のこなしが優雅で歌も唄える。他の俳優とは比べようもないね」。
 その一方、『オーストラリア』の監督バズ・ラーマンはこうだ。「ニコール・キッドマンを抱き上げてベッドに放り投げ、頼もしさでうっとりさせられる。そんな能力を持つ俳優はそうはいない。その上、彼は牛追いも上手い」。
 この10年、ハリウッドで彼が演じてきた役をかいつまんで見てみよう。勇敢なヴァンパイアハンター(『ヴァン・ヘルシング』)。
プレスリーを歌う皇帝ペンギン(『ハッピーフィート』:声の出演)。嫉妬に駆られたマジシャン(『プレステージ』)。殺人狂のハンサムな英国貴族(『タロットカード殺人事件』)。安っぽい詐欺師(『彼が二度愛したS』)。中国語が堪能なナイトクラブ経営者(『雪花と秘文字の扇』)。ロボット格闘技にかける落ち目の元プロボクサー(『リアル・スティール』)。そして次回作『The Greatest Showman on Earth』で演じるのは、アメリカの伝説的なイカサマ師にして興行師のP・T・バーナムだ。もちろんその合間に身体を鍛え上げ、5本の『X-MEN』シリーズでウルヴァリンを演じている。2012年にロサンゼルスのウォーク・オブ・フェイムに彼の名を冠した星が追加されたときはこう言った。「15本もの映画で同じ役を演じることで、この星を手にしたのは僕だけだろうね。名犬ラッシーを除けば(笑)」。(現時点では予定も含めて10本)
 ウルヴァリンは自身のキャリアにおける土台だと、ヒューは言う。
 「『X-MEN』は僕が初めてアメリカで出演した映画で、あの作品が僕を有名にしてくれたし、監督よりもスタジオが僕をキャスティングしたがるような肩書きを与えてくれた。その逆パターンはよくあるんだよ。実際、オーストラリアにいた頃に僕と仕事をしたがったのは監督たちで、金を出す人たちは“こんな無名俳優は使うな”って感じだったからね。初めてのアメリカ映画は大ヒットしたし、ウルヴァリンはある意味で古典的な役だったから、スタジオは好感を持ってくれたんだろう。その代わり、監督からオファーをもらえるまでには少し時間がかかったけどね」
 だが今や、大作ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』では主役のジャン・バルジャンとして歌い上げ、作家性の強いドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』では復讐に憑かれた狂気の父親を演じ、アカデミー賞授賞式の司会さえもやっている。
「ウルヴァリンが何かの妨げになったり、そのせいで型にはめられることもなかった。昔は、例えばジェームズ・ボンドを演じた俳優たちが、そのせいで固定観念を持たれてしまったといった発言をしていたよね。でも僕はこの役でそうはならなかったし、そのことを本当に感謝してる。自分が他に何ができるかを見せるチャンスが何度もあったんだ。かなり意識的にスーパーヒーローものとはかけ離れたことをしようとしてきたからね」
 学生時代からやっている朝晩の15分間の瞑想も、この世界における彼の気の持ちように少なからずいい影響を及ぼしているようだ。
「個人の生活においては真理を理解したいと思うし、それは常にずっと続けている。瞑想は僕の心のよりどころだし、自分自身を取り戻す方法でもある。取材される側の人間だとか夫だとか俳優とかなんでも構わないけれど、それらはどれも単なる役割でしかないんだよ」
 人生においてどんなに大きな出来事を与えられようと、突き詰めればそれはたいした問題じゃないと彼は言う。だからこそ華々しい成功を手にしても、それに溺れたり、振り回されたりすることがないのかもしれない。
「キャリアをスタートした頃は、常に通りをグレートデーンに引きずり回されているかのようだった。“おいおい! 楽しいけど制御できないよ!”って感じだね。でも僕は難局を乗り越えるのが好きなんだよ。これはさざ波でも2フィートの波でもない、ビッグウエーブなんだっていう事実に乗っかってしまうのさ。高波がきたらどうする? 身をかわして隠れる? それとも起き上がってボードに乗り、前に進む? 僕は、たとえ波に飲まれてボードから落っこちても、波乗りを楽しむよ。重要なのは結果ではなく、波に乗ること自体だと気づくことだ。それこそが僕のたどり着きたい境地なんだよ」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 01

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