Thursday, December 12th, 2019

NEO TRADITIONAL GAZATTEER
RAKISH TOKYO GUIDE vol.2
ザ・レイクの東京案内

自分の理想とする明確なスタイルを持っていてそれを譲らないサルトと、顧客の要望にどんどん合わせていくサルトがいるが、小野氏は前者だ。ただし、オーダーの場合、大枠だけを伝えてお任せしたほうが、絶対的に上手くいくことが多い。驚くべき仕付け量だ。丁寧な仕事ぶりが窺えるが、これだけ味わい深さを出せるのは、やはりナポリで学んだ男である。

ANGLOFILO アングロフィロ
古きよき時代のナポリ仕立ての空気を追い求める男

サルトが仕立てる服は、その男の生き写しだ。
小野雄介氏の服は、今、輝きに輝いている。
photography jun udagawa text yuko fujita
 海外からトランクショーのオファーがあっても首を縦に振らない男だが、それでも日本人で最もインターナショナルな顧客を抱えているサルトは小野雄介氏だ。

 かねてから気心の知れた仲だったイーサン・ニュートン氏が昨年原宿に「ブライスランズ」をオープンさせると、彼のラブコールを受けて工房を高円寺から同店の奥に移した。今や顧客の半分以上が外国人だという。お弟子さんをひとり抱えて二人体制で縫っているが、仕事が追い付かず納期は約1年半~。

 2003年に渡伊し、フィレンツェで1年、ナポリで2年修業した。裁断法は最初についたフィレンツェの親方のスタイルを踏襲しているものの、その親方はナポリの出身で、その後ナポリに渡って学んでいるから服の空気は完全にナポリだ。

 ただ、独特の曲線美で構成されたカットは、往年のクラシックとでも言おうか、ある種の高貴さが漂う。腰ポケットにもダーツを取ることで裾のラインを外に逃がし、胸回りの外側の縦のラインが中央のそれより短くなるため、胸のボリュームが前に膨らんで独特の立体感がある。

 イタリアで修業した3年間で、技術はもちろんだが、それ以上に職人としての心構えを学べたのが大きかったという。

「スーツにはデザインという要素が残されているから、そこに究極は存在しないですよね。短期的には今以上に上手くなりたいですし、長い目で見ればサルトリアの文化を継承する立派な職人を、ひとりでもふたりでも育てたい。それが私の夢です」

 小野氏が見据えているのは、30年後の自分であり、仕立ての文化だ。先日亡くなったナポリの偉大なサルト、レナート・チャルディは、以前取材したときにこんなことを言っていた。

「La Sartoria non fa moda, fa storia(サルトリアはモードではない、歴史を作っているんだ)」。一歩一歩前を向いてサルトの道を歩んでいる小野氏の真摯な姿勢に、ふと彼の言葉を思い出した。

ANGLOFILO
東京都渋谷区神宮前3-15-4
Tel.03-6721-0133
営業時間:Bryceland’s Coに準ずるが、小野氏は木曜が休み
anglofilo.tumblr.com

本記事は2017年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 16

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