Wednesday, October 9th, 2019

The siren’s call:how Brigitte Bardot redefined female sexuality

セイレーンの呼び声―ブリジット・バルドー

彼女はまるで、当時の重苦しい空気を吹き飛ばす、一陣の爽やかな風だった。フランス初の世界的大スターは、
“セクシーな子猫”の役を見事に演じ、それを体現してみせた。彼女の非凡な人生と多彩な恋愛遍歴にスポットを当てる。
text nick scott
issue10

ブリジット・バルドー 1974年

 映画史上最もセクシーなシーンは、何だろう?

 1973年のサイコスリラー『赤い影』でドナルド・サザーランドとジュリー・クリスティが演じた、ヴェネツィアでの激しい交わりもいいが、ベストではない。2010年の『ブラック・スワン』でミラ・クニスとナタリー・ポートマンが見せた、女性同士の密会も違う。『イディオッツ』でラース・フォン・トリアーが描いた性の饗宴でもなければ、『つぐない』でキーラ・ナイトレイとジェームズ・マカヴォイが熱演した、本棚にもたれたまま絡み合う場面でもない。

 映画フィルムに残る最もセクシーなシーンは、ヌードやセックスとは無縁なのだ。BGMもテナー・サックスが奏でるなまめかしい曲などではなく、激しく打ち鳴らされるボンゴのリズムだ。

 ご明察の通り、私が思い浮かべているのは、『素直な悪女』に出てくる有名なダンスシーンである。舞台は1950年代のサントロペ。奔放な性を謳歌する若き孤児に扮したのは、ブリジット・バルドーであった。バルドーは男たちのために、テーブルの上でダンスする。素足で髪を乱し、スカートを激しく揺らしながら、溢れんばかりの色気を全身から放つ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 16
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