December 2019

NEO TRADITIONAL GAZATTEER RAKISH TOKYO GUIDE vol.14

OSAKU オサク
中庸の美を奏でるパンタロナイオ

本人は謙遜するが、ひとつの到達点に達したのではないか。
彼こそ世界一と評する人さえいる、パンタロナイオの尾作隼人氏だ。
photography setsuo sugiyama text yuko fujita

4月に工房を移転し、6畳ほどだった以前より、だいぶ広くなった。手縫いのステッチもルンルン楽しい。もちろん、甘く、丁寧だ。

 ナポリのサルヴァトーレ・アンブロージの登場で、ビスポークのトラウザーズは今世界的なブームとなっているが、彼のトラウザーズとは異なるアプローチを見せるパンタロナイオ(トラウザーズ職人)が尾作隼人氏だ。

 氏のトラウザーズは、マーキスの川口昭司氏の仕立てるビスポークシューズと共通するところがある。それは、両者の作品に備わっている、中庸でありながら完璧な調和のもとに初めて生まれてくる控えめな色気だ。華美ではないこの手の色気を備えたトラウザーズは本当に貴重であり、実はこちらのほうがより研ぎ澄まされた感性の高さが要求されるように思う。

 年間生産本数は100本に届くかどうかという。腰へのフィット感、穿いた際の股下から裾への美しいライン、裾に向かってまっすぐに落ちたクリースライン、あるいは3㎝幅のウエスマンなどのディテール、美しい手縫いの縫製に至るまで、見事なハーモニーを織りなしている。逆説的な言い方をすれば、それは中庸を究めたゆえの強烈な個性だ。

 尾作氏が仕立てたものに脚を通せば、2プリーツのトラウザーズがこんなにも快適で美しいものだということがわかるはずだ。1本のトラウザーズで新たな世界に出合える、という表現は、決して大げさではない。日本人がイタリアの仕立てばかりを羨む時代は、もう終わったのかもしれない。

Osaku
神奈川県川崎市生田7-10-6 パインワン生田102
Mail:osaku@milestone-spk.com(要予約)
営業時間:10:00~20:00 不定休
Instagram:osakuhayato039

本記事は2017年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 16

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

ザ・レイクの東京案内

BRYCELAND’S CO. ブライスランズ 原宿から世界に向けて発信される“イーサンズワールド”

ANGLOFILO アングロフィロ 古きよき時代のナポリ仕立ての空気を追い求める男

SARTORIA CICCIO サルトリア チッチオ 世界中の富裕層を魅了する都会的なナポリ仕立て

YOHEI FUKUDA ヨウヘイ フクダ ニッポンのビスポークシューズシーンの牽引役となった靴職人

PECORA GINZA ペコラ銀座 ミラノに連綿と息づくスタイルを東京で継承した第一人者

VICK TAILOR ヴィックテーラー 日本らしい美しさを追求した柔軟性も魅力のテーラー

FAKE α フェイク アルファ アメカジテイストを固守する究極のヴィンテージショップ

ORTUS オルタス 革と対話し、革の魅力を最大限に引き出す手縫い鞄職人

DUNHILL GINZA HOME ダンヒル銀座本店 ワクワクが詰まった紳士の館世界3店舗のみの「ホーム」

YAMAGAMI SHIRT 山神シャツ シャツ作りへのたゆまない情熱が たゆまない進化を生むシャツ職人

FUGEE フジイ 究極の手縫い鞄作りを 目指し続ける真の求道者

MARQUESS SHOEMAKER マーキス シューメーカー 究極の靴を追い求めて ストイックさを増す靴職人

DAVIDS CLOTHING デイヴィッズ クロージング 貴重なお宝ものが数多く眠る 英国ヴィンテージの聖地

IGARASHI TROUSERS イガラシ トラウザーズ トラウザーズ界、若手の最ホープ

THE H.W.DOG & CO. ザ エイチ ダブリュ ドッグ アンド コー こだわりが凝縮された帽子専門店

BRIFT Ḧ ブリフト アッシュ サロンのような空間で極上の靴磨きサービス

HANEDA AIRPORT JAL FIRST CLASS LOUNGE 羽田空港 国際線 JALファーストクラスラウンジ 羽田空港でジョン ロブの靴磨き

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