The Rakish ART ROOM Vol.07
今買える、世界の名画 Vol.07
クロード・モネ
July 2020
パリの北西約80㎞に位置する、小村ジヴェルニー。列車の窓越しにこの美しい村を発見したクロード・モネは、1883年、42歳のとき、死別した前妻との子どもたち、そして2番目の妻になるアリス・オシュデやその連れ子たちとともにこの地に移り住んだ。
朝霧に煙るエプト川、高々と生い茂るポプラ並木、ひなげしの草原、そして農家の納屋を改装した、果樹園に面した心地よいアトリエ……。「私は歓喜に酔っている。ジヴェルニーは私にとって最高の場所だ」。モネの手紙からは、移住1カ月にして、すっかりジヴェルニーに魅了されていたことを知ることができる。
1883年、モネは後の妻となるアリス・オシュデとお互いの子ども8人を伴い、ジヴェルニーに移住した。その家の近くの丘から描いた本作は、手前に広がる茶系の家々と、長いストロークで描かれた中央部の樹木、遙か彼方に広がる青みがかった丘が、それぞれ表情豊かに表現されている。1886年春、モネはオランダに滞在し有名なチューリップ畑の絵を描くが、本作はオランダから戻った直後の晩春か夏に描かれたと考えられる。キャンバスに油彩、66×81.6cm、1886年制作。 お問い合わせ:ザ・レイク・ジャパン info@therakejapan.com
その7年後、巨匠への階段を上り始めていた彼は、それまで住んでいた家と庭を購入。さらに隣接する土地を入手して「水の庭」を造り、1926年、86歳で亡くなるまで、200点以上に及ぶ《睡蓮》の連作を描き続けた。
《ジヴェルニー風景》は、彼がこの村に来てから3年後、フランス各地を写生してはジヴェルニーの借家に戻るという生活を繰り返していた頃の作品である。自宅から歩いて数分のところにある丘の中腹にイーゼルを立てて描いた本作は、家々の乾いた色調と、中景以降に生き生きと広がる樹木や丘の、多彩な緑とのコントラストが印象的だ。
本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 33