Thursday, May 14th, 2020

手仕事モノ図鑑03

KENJI KAGA
エンブロイダリータイ

“神は細部に宿る”という言葉のごとく、磨き抜かれた職人技は
ほんのわずかなディテールにも結晶のごとく集約されている。
そんな手仕事名品たちの“見どころ”を解説しよう。
text hiromitsu kosone photography jun udagawa styling akihiro shikata

フィレンツェ伝統の
手刺繍をタイに

issue10

Craftsmanship Pointフィレンツェに古くから伝わるハンドエンブロイダリーの技によって装飾が施されているのが「ケンジ カガ」の特徴。刺繍の内側がくり抜かれたこちらは、刺繍を施したあとに内側の糸を抜いて仕上げたもの。実は大変な手間がかけられた装飾なのだ。ひし形や線を組み合わせた柄表現も、フィレンツェの伝統的な刺繍模様をモチーフにしている。

 アット ヴァンヌッチのネクタイコレクションで世界的な知名度を誇る加賀健二氏だが、同ブランドとは別に、氏本人の名前を冠した別プロジェクトにも取り組んでいる。こちらもフィレンツェの職人がハンドメイドで仕立てているが、特徴的なのはすべてのタイに手刺繍をあしらっていることだ。

 フィレンツェには刺繍文化の伝統があり、それをネクタイに取り入れたいと思ったことが「ケンジ カガ」立ち上げのきっかけになったのだという。

 加賀氏は魅力的なクリエイションを行うことと同様に、フィレンツェ伝統のクラフツマンシップを守ることにも情熱を注いでいる。実はこのハンドエンブロイダリー技術も職人の減少により絶滅の危機に瀕しているのだが、その灯を絶やすまいと思案し、新しい形での進歩を図った結果がこのプロダクトというわけだ。

 古くから職人の手仕事は、それを愛する者たちのパトロナージュによって支えられてきた。ケンジ カガのネクタイ作りもまた、現代におけるひとつのパトロナージュといえるだろう。我々は彼らの美しい作品を締めることで、その志ある事業に参加できるのだ。

本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 33

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

THE WARMTHCRAFTS-MANUFACTURE コードバン鞄

100 HANDS 「ゴールドライン」シャツ

JOHN LOBB ビスポーク乗馬ブーツ

FERRUCCIO SERAFINI バッグ

ANTICA CAMICERIA LOMBARDI シャツジャケット

CICCIO ビスポークスーツ