May 2020

手仕事モノ図鑑07

THE WARMTHCRAFTS-MANUFACTURE
コードバン鞄

“神は細部に宿る”という言葉のごとく、磨き抜かれた職人技は
ほんのわずかなディテールにも結晶のごとく集約されている。
そんな手仕事名品たちの“見どころ”を解説しよう。
text hiromitsu kosone photography jun udagawa styling akihiro shikata

革創りから仕上げまで
日本職人の粋を結集

全く乱れのない清冽な仕立てながら、コードバンの味わいによって温かみも感じさせるブリーフケース。5つの底鋲が付けられ、しっかり⾃立するのもいい。縦31.5×横44×マチ8㎝ ¥400,000 The Warmthcrafts-Manufacture

Craftsmanship Pointジ・ウォームスクラフツ マニュファクチャーの真髄は、タンナーとファクトリーの密接な関係にある。ベジタブルタンニンなめしによって丹念になめされた新喜皮革製コードバンを縫製する職人たちは、同社の革を知り尽くしたスペシャリスト。それゆえ、縫製の難しいコードバンもここまで美しく仕立てられるのだ。各工程における手仕事の完璧な融合が生む品質である。

 ホースレザーに特化したブランド、ジ・ウォームスクラフツ マニュファクチャーは、これからもっと評価されるべき存在だ。その理由は、製革から縫製、仕上げに至るまで、すべてのプロセスにおいてジャパンメイドにこだわっているゆえ。実はここまで一貫しているのは、数ある日本ブランドの中でも珍しい。

 その中でもシグネチャーとなるのがコードバン製の鞄。素材は日本で唯一、コードバンを原皮から仕上げまで一貫生産する新喜皮革が手がけたものだ。滑らかでしなやか、輝くような透明感と美しい光沢を兼ね備えた上質なコードバンを生み出すには、その日の気温や湿度を考慮して微妙な調整を加える必要があるという。それを可能にするのは、いうまでもなく熟練職人の経験と技だ。

 こうしてできあがった革はその後、日本随一の縫製技術を持つ鞄職人のもとへ送られ、彼らがひとつひとつ丹精を込めて最上級の鞄へと仕上げていく。全く歪みのないアウトラインや力強く正確なステッチワークは、これぞ日本職人の技というべき美しさだ。これを使い込んでいくと一体どうエイジングするのか。想像すると楽しみでならない。

本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 33

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

CICCIO ビスポークスーツ

ANTICA CAMICERIA LOMBARDI シャツジャケット

KENJI KAGA エンブロイダリータイ

FERRUCCIO SERAFINI バッグ

JOHN LOBB ビスポーク乗馬ブーツ

100 HANDS 「ゴールドライン」シャツ