The Rakish ART ROOM Vol.07
今買える、世界の名画 Vol.07
クロード・モネ
July 2020
ジヴェルニーのモネの家は、睡蓮が浮かぶ「水の庭」が有名だが、こちらは邸宅前に広がる「花の庭」。モネが造った理想の庭は、彼のもうひとつの芸術作品でもあった。
小説家で批評家のギュスターヴ・ジェフロワは、イーゼルをロープで石にくくりつけ、パレットや筆を強風に飛ばされながら、荒れ狂う海を描くモネの姿を、ブルターニュのベリール島で目撃している。各地の風景を描きながら、この時期モネが模索していたのは、同じモチーフを異なる気候や時間のもとに表現するという、後の連作につながる手法だった。
1889年にロダンとの2人展で大成功を収めたモネは、それまで住んでいたジヴェルニーの土地と家を購入。その翌年から彼の芸術のステージも、「積みわら」「ポプラ並木」「ルーアン大聖堂」そして「睡蓮」と、本格的な連作の時代へ突入した。
《積みわら、夏の終わり、朝の効果》1891年、オルセー美術館 《牧草地、曇り空》ほか一連の連作を描いた後、いよいよ本格的に「積みわら」の連作に着手。積みわらと、それを包む光の効果をさまざまに描いた。
実際、《牧草地、曇り空》が描かれた直後より、モネは積みわらのクローズ・アップをさまざまな時間や天候のもとに光の効果を表現した25点の壮大な連作、「積みわら」のシリーズを描き始める。
いわばレ・ゼサールの花畑を描いた《牧草地、曇り空》は、モネの連作の時代の幕開けを告げる作品といえるだろう。
本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 33