The Rakish ART ROOM Vol.01
今買える、世界の名画 Vol.01
マルク・シャガール
July 2020
南仏サン・ポール・ド・ヴァンスにて。(1957年)
日本人と“美の概念”を共有する画家 さらにいえば、相思相愛であるところも好ましい。印象派の面々は、当時ヨーロッパに巻き起こった「ジャポニスム」と呼ばれる日本趣味に夢中だった。浮世絵や屏風、工芸品などを熱心にコレクションし、こぞって模写に励んだ。シャガールはといえば、技法・手法・テーマ設定に日本美術の影響は見られない。しかし、心情的にはかなり共感するところがあったようだ。
彼は1963年、日本で初めての大規模な個展を国立西洋美術館で開くこととなる。その際に寄せた本人の言葉は、詩的で真摯な、まるで彼の絵を言語に転換したような美しいものだった。このような文章だ。
「私は 日本のみなさんについて いつも想像しています 心の深い民族 目に映ずるものを 言葉がなくても感じとれる民族的なのだ と」
「みなさんを身近に感じるのは 私が 多くのみなさんと同じように 存在しないものを夢みずにはおれない人間だからです みなさんもあの瞬間を知っているのではありませんか? 夜明けにひとりで歌いだす小鳥のように 夢が私たちの手や心のなかでとつぜん花ひらく―あの瞬間を!」
同じ「美の概念」を共有しているのでしょう、あなたたちも? 20世紀の巨匠からの、そんな問いかけである。なんとも素直に嬉しい言葉ではないか。
叶うのであれば、シャガールの作品を手もとに置いてみたい。そう願う気持ちが、否応なしに高まるのである。
ベラを亡くしたあと1952年にヴァランティーヌ・ブロツキーと結婚。以降、97歳まで生きたシャガールのよき伴侶となった。写真は1967年、シャガール80歳の頃。
本記事は2019年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 27