May 2019

FOR ONE BRIEF SHINING MOMENT

ケネディが光り輝いた瞬間

text stuart husband

執務室で息子のジョンと。1963年。

 取り巻きのひとりであるジャーナリストで歴史家のセオドア・ホワイトはこんな思い出を語っている。

「いまだにケネディの写真を見るのがつらい。私が覚えている彼のイメージは非常にクリーンで優雅。大統領専用機の階段を軽やかに駆け上がると身を翻し、群衆に手を振りながら中に消えていく。まるでバレエダンサーのような動きだった」

お気に入りの歌詞 またケネディ一家は、開かれたホワイトハウスを演出し、さまざまな文化との結びつきを深めようとした。招待された作家や芸術家、知識人には、チェロ奏者のパブロ・カザルスや詩人のロバート・フロスト、フランスの文化人アンドレ・マルローなどが名を連ねている。

 ケネディは母校である名門ハーバード大学の教授陣をブレーンに迎え、詩人や哲学者の言葉も演説によく引用した。こうして最高の顔ぶれを揃えたケネディ政権の輝かしいイメージは、ケネディの暗殺後、ジャクリーン・ケネディのコメントによってさらに美化された。セオドア・ホワイトによるライフ誌の有名なインタビューで、彼女は次のように回想している。

「ジャックは夜寝る前にレコードをかけるのが好きだったけれど、一番のお気に入りはこのレコードの最後に入っている曲だったの。“忘れてはならない、つかの間であっても、光り輝く瞬間があったことを、それを人々はキャメロットと呼んだ”という歌詞が大好きだったわ」

 これは、ブロードウェイのミュージカル『キャメロット』の挿入歌で、その歌詞は偶然にもハーバード大学でケネディの同窓生だったアラン・ジェイ・ラーナーが書いたものだ。ケネディ政権の時代をアーサー王伝説の理想郷に例えたジャッキーの言葉は、今でも語り継がれている。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 26
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