Thursday, April 18th, 2019

WILL&TESTAMENT

稀代の怪優ウィレム・デフォー

どんな役でもどこか謎めいていて、見事な演技を見せる怪優、ウィレム・デフォー。
ハリウッドの新世代の俳優に、才能と同時に高潔さを求められるようになった今、
40年以上かけて築き上げられたデフォーのキャリアは、彼らにとって大きな指針となるだろう。
text tom chamberlin photography michael schwartz
fashion direction jo grzeszczuk Special thanks to The Carlyle Hotel, New York
issue10

Willem Dafoe / ウィレム・デフォー1955年ウィスコンシン州で、医療従事者を両親とする8人兄弟の7番目として誕生。幼少期にオランダ名風の「ウィレム」の愛称を得る。ウィスコンシン大学中退後、前衛劇団シアターXに入団。ニューヨークでウースター・グループのメンバーとして活動し、1982年に『ラブレス』で映画デビュー。その後数々の映画作品に出演し、アカデミー助演男優賞に3度ノミネートする実力派俳優。

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 バルジュモンというフランスの辺鄙な町にいた私は、2台の電話とラップトップでインタビューを記録していた。暗い谷を見下ろすその町には、不気味な嵐が近付いている。一方、ウィレム・デフォーはニューヨークにいた。彼は本記事に向けた撮影を終えたばかりで、生き生きとしていた。インタビュー中に5分ほど通信が途絶するというトラブルに見舞われたのだが、デフォーは「コーヒーを飲みに行って、戻ってきたんだね?」と言って場の空気を和ませてくれた。普通こういう場合はインタビュアーの方が気を遣うべきなのだが。この彼の気さくさがインタビューの最後まで感じられたことをぜひお伝えしたい。

 ウィレム・デフォーには何か特別なものがあり、間違いなく謎めいている。彼という人をひと言で言い表すとしたら、“生きて呼吸するロールシャッハテスト”だ。彼の演技は、演じている彼自身よりも、むしろ観ている者の内にあるものを明らかにする。まるで彼にとって、潜在意識は玩具であるかのように。彼の目は、時に威嚇するように輝き、時に優しく頼りなさげな表情で慰めをもたらす。この力を最も端的に示しているのは、彼がキリスト役と反キリスト役の両方を演じたことがあるという事実ではないだろうか。彼の怪演を生かすかどうかは、監督の力量が試されるところでもある。だからこそ、(後述の通り)彼は一緒に仕事をする人を慎重に選ぶのである。

 ジュリアン・シュナーベル監督と最近完成させた作品、『永遠の門 ゴッホの見た未来』(日本では2019年公開予定)でのフィンセント・ファン・ゴッホ役は、仕事を選ぶというデフォーの方針が守られるに値することをよく表している。彼は作品の規模や出演料よりも、仕事自体に興味がある。つまり、本心に正直であるということが最も重要なのだが、彼がずっとそうだったわけではない。

芽生えた芸術性と反骨精神 デフォーはウィスコンシン州アップルトンで生まれ育った。故郷は、彼の後のキャリアを形成することになる反骨精神を育んだ。幼少期の彼は、トラウマもなければ、特に不幸なこともなかった。中流階級特有の倦怠感は、彼の天賦の才を伸ばすのにまったく役立たなかったのだ。

本記事は2019年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 26

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