May 2019

FOR ONE BRIEF SHINING MOMENT

ケネディが光り輝いた瞬間

text stuart husband

メイン州での休暇中に米沿岸警備隊のヨットの舵を取る姿、1962年。

 なかでも、プレップスクール時代の講話を引用して「チョート」という校名を「国」に置き換えた一句―「国があなたのために何をしてくれるかを問うのではなく、あなたが国のために何をできるかを問うてほしい」は有名だ。教師や公務員、平和部隊などの勧誘句ともなった名言はかくして生まれたのである。

スマートなルックス それらに加えて、ケネディ自身の魅力もまたJFKブランドの人気を高めた一因だ。詳細については、彼の友人でもあったジャーナリストのベン・ブラッドリーの著作『That Sp ecial G race』(1964年)に書かれている。ケネディは端正なルックスとスポーティーな体格、そして自身に引けをとらないほど魅力的な妻子に恵まれていた。これほどスリムで男らしい大統領が、ウインドブレーカー姿にレイバンのサングラスをかけ、大統領専用ヨットのハニー・フィッツ号でハイアニス・ポート沖をセーリングしている様子、あるいは執務室で子供たちと戯れ、エアフォースワンで娘のキャロラインを膝の上にのせている姿を想像してほしい。大統領らしいスマートでモダンな装いも実に絵になるのだ。メンズウェアの歴史に詳しい作家のG・ブルース・ボイヤーはこう書いていた。

「彼は人々に安心感を与えるような装いを心がけていたが、これは記者会見を重ねるうちに自然と身についたものだ。誠実さと軽やかさ、深みとユーモア、計算と直感のバランスがすばらしい」

 ケネディは、アイビースタイルをベースにしたカッティングと控えめなソフトショルダー、ゆるやかな胸のラインからウエストをやや絞った、最高にシンプルなピンストライプやダークグレイの2Bスーツで、ボイヤーが言うところの「洗練されたアイビースタイル、東部上流階級のビジネスルック」を上手く取り入れていた。

 プライベートでは、ポロシャツと、素足にデッキシューズが週末の定番だったという。“時の人”らしいコーディネイトに磨きをかけるため、大統領になってもほとんど帽子を被ることはなかった。ロナルド・レーガンのずっと前から、ケネディは大統領でありながら、まるでハリウッドスターのように取り巻きからも人気があったのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 26
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