Monday, May 13th, 2019

HAPPY BIRTHDAY, MR. PRESIDENT
富と審美眼を持つ男の象徴
“ロレックス デイデイト”

1956年の誕生以来、ロレックス デイデイトは、男らしさ、力、成功者の歴然たるシンボルだ。
コレクターの間では“プレジデント”の時計として知られている最高峰の腕時計である。
text wei koh

曜日表示の魅力
 12時位置に鎮座し、プロメテウスの松明のように煌々と輝き、眼鏡をかけたボーダーコリーよりも賢く、マティーニによる酔いを一気に醒ます―それがロレックスの伝説的モデル、「デイデイト」の曜日表示である。選択可能な26の言語表記の中で、私はいつもフランス語に惹かれていた。それはフランス語が曜日名の起源を思い起こさせてくれるからだ。
 曜日名の起源は、紀元前1~3世紀に遡る。ローマ帝国が市日に基づく1週間8日制を7日の制度に変えた際、太陽(現英語名Sun)、月(Moon)、火星(Mars)、水星(Mercury)、木星(Jupiter)、金星(Venus)、土星(Saturn)に基づいて名付けた。フランス語はラテン系言語なので、ギリシャ・ローマの神々にちなんで名付けられたこれらの天体とのつながりが明確だ。月曜日はLundi(フランス語の“月”は“Lune”)、火曜日はMardi、水曜日はMercredi、木曜日はJeudi、金曜日はVendredi、土曜日はSamediである。日曜日を意味するDimancheだけが逸脱しているが、ラテン語で「主の日」を意味する「dies Dominicus」に由来している。
 一方、英語の曜日名は、ローマ方式のゲルマン的解釈に由来する。ローマ方式は西暦200年頃に伝わり、古英語で使用される曜日名に影響を与えた。実は、古英語は西ゲルマン諸語のひとつ。例えば「Sunday」は「dies Solis(ラテン語で“太陽の日”の意)」を訳した古英語「Sunnandæg」に基づいている。また、「Friday」はアングロサクソン人の女神フリッグ(Frigg)の日を意味する「Frigedæg」に由来する。金星は古ノルド語でフリッグの星と呼ばれていたのだ。

パワーを高める“プレジデント”
 ロレックス デイデイトを着けた者は、ミック・ジャガーの絶妙な言葉を借りれば、「a man of wealth and taste(富と審美眼を持つ男)」と見なされる。デイデイトという名は、曜日(Day)と日付(Date)を同時表示できることを意味する。曜日は、前述の12時位置の小窓に表示され、日付は3時位置のサイクロップレンズを通して見る仕組みだ。
 デイデイトの初期の広告では、閉ざされた立派な扉に、見事な出で立ちの守衛がふたり立っている。そして、「あなたは彼らの声を、数多の新聞記事や雑誌記事で知っている。彼らの姿と声を、ニュース映画やテレビで見聞きしている」というコピーとともに、この時計を着用する男性像を想起させる。別の広告では、「プレジデントたちが着用しているのを至るところで目にするロレックス デイデイトを所有するには、1000ドルかかる」と書かれている。ロレックスがデイデイトの対象層を臆面もなく提示したことは、こうしたメッセージからも明らかだった。
 1956年に誕生したデイデイトは、リンドン・B・ジョンソンや*ジョン・F・ケネディの腕元を飾ったことから、コレクターの間では“プレジデント”と呼ばれている。誕生から半世紀以上の間に、デイデイトは数えきれないほどの映画に登場し、成功者の象徴となった。その好例が、デヴィッド・マメット原作の映画『摩天楼を夢みて』である。同作で不動産会社の幹部を演じるアレック・ボールドウィンは、シャンパンダイヤル×イエローゴールド製ケースのデイデイトを着用している。結果を出せない営業マンたちを激しく非難する彼は、コンシールドタイプのクラスプをはずし、「この時計が見えるか? 君のクルマより高かったんだ」と告げる。営業マンたちは、成功と力を象徴する大いなる崇敬物を唖然として見つめることしかできなかった。痛烈な口撃に続いて、この時計は彼らに大きな衝撃を与えたのだ。

1950~60年代:ref.65XX、66XX、18XX
 1950年代は、ロレックスがプロフェッショナルウォッチ分野に華々しく君臨した時代だ。1953年に、ダイバーズウォッチとして史上最高の成功を収めることになるサブマリーナーを発売。1955年には、パンアメリカン航空のパイロットたちの依頼によりGMTマスターを発表した。フライト中もグリニッジ標準時を把握できる、世界初のデュアルタイム式腕時計だった。
 だが1956年に発表したのは、プロフェッショナルウォッチでも小型ドレスウォッチでもなく、大型(36ミリ)のクロノメーターで、ねじ込みリュウズを特徴とする骨太な形状、水深165フィートまで対応する防水性能、ブレスレットを備えていた。こうして最初に発売されたデイデイトが、リファレンスナンバー6510と6511だ。この2モデルはわずか1年で生産終了となり、6611、6612、6613が後継として登場した。これらは、フリースプラング方式のテンワと調整用のマイクロステラスクリューを備えた新キャリバー 1055を搭載することで、クロノメーターとして公式認定を得た。その結果、6510と6511に表記された「Officially Certified Chronometer」に代わり、「Superlative Chronometer Officially Certified」という文字がダイヤルに表記されることとなった。
 高い知名度を誇る1800番台のデイデイトは、1959年に誕生する。中でも一番有名なのは、おそらく1803だろう。これらは当初、キャリバー 1555を搭載していたが、60年代半ばには振動数を上げたキャリバー 1556に切り替わった。
 俗説によると、1959年には推定6本の6611がスチールで製作されたという。スチール製デイデイトはこれ以外に存在しないが、それが商用に製造されたのか、試作機が最終的に市場に出たものなのかは不明で、現在も明確な答えはない。
 1969年には、ブレスレットのクラスプを隠した“コンシールド・クラスプ”が加わった。これがプレジデント ブレスレットとして知られるようになる。

1956 年に誕生したロレックス デイデイトは、半世紀以上経つ現在でもその意匠を大きく変えていない。それは、腕時計として当時から完成されていたことの証左である。写真は、現行モデルの「デイデイト 40」。自動巻き、18KYG ケース、40mm。¥3,320,000 Rolex

デイデイトを着用する映画界の“プレジデント”、マーティン・スコセッシ監督。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 26
1 2

Contents