May 2019

FOR ONE BRIEF SHINING MOMENT

ケネディが光り輝いた瞬間

text stuart husband

1953年のケネディとジャッキー。マサチューセッツ州ハイアニス・ポートで。

異常性欲の一方で生涯病弱 しかし、ケネディの輝かしいイメージに異を唱える者は後を絶たない。彼は優れた大統領だったが偉大な大統領ではない、と言う学者たちもいる。1982年に行われた歴史家たちによる投票では、対象となった大統領36人中13位だった。

 1960年の大統領選における不正を主張する者もいた。ケネディの父ジョセフはアメリカで最も裕福かつ冷酷な人物のひとりで、買収を行えるほどの立場にあったからだ。マフィアとの関係も疑われている。そしてもちろん、ケネディはシークレットサービスを悩ませるほどに女性関係も華やかで性欲が強かった。

 ちなみに、若々しくバイタリティに溢れたケネディのイメージ自体も、実は幻想である。彼は背中を支えるコルセットを身に着けており、さまざまな病気で入退院を繰り返し、その人生のほとんどを病院で過ごしていた。ジャクリーン・ケネディと姻戚関係にあり、ケネディ政権の顧問でもあったゴア・ヴィダルは昔から歯に衣着せぬ物言いで、1961年にはタイムズ誌の記事にこう書いている。

「ケネディは写真より老けて見える。体型はスレンダーだが、顔にはシワが多く、左右の目の色が違う。くすんだブルーの瞳には“興味をそそられる”が、ガートルード・スタインがヘミングウェイの瞳について述べたように“面白みがなく”、平坦な印象を与える。彼には、子供のようにずんぐりした指で神経質にテーブルを叩く癖があった。装いにはまったく隙がないが、縮れた白い胸毛が襟からのぞいていることもあった」

『JFK: Reckless Youth 』の著者、ナイジェル・ハミルトンはこうも書いている。

「ジャックは、有権者や女性をひとたび手に入れると、どこか空疎になり、征服を意義あるものや奥深いものに替えることができなかった」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 26
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