June 2021

REAP THE WHIRLWIND
―Breguet ブレゲ―

トゥールビヨンという
原点への敬意

text nick scott

 現代のブレゲは、創業者のこの偉大な発明に多大な敬意を払っている。1月末まで開催されていた、ロンドンのナイツブリッジにある時計店Watches of Switzerlandでの展示を見れば、それは一目瞭然だった。ここでは、2020年の新作に至るブレゲのトゥールビヨン モデルの業績をはっきりと物語っていた。

 まず観る者の心を摑んだのは、シリコン製のブレゲ・オーバーコイルを備えたヒゲゼンマイとフュゼ・チェーン・トランスミッションを搭載した「トラディション トゥールビヨン フュゼ 7047」である。その名の通り、トゥールビヨンだけでなく、さらにもうひとつの画期的な発明といえるフュゼ・チェーン・トランスミッション機構を組み合わせた時計だ。

 2014年には「クラシック トゥールビヨンエクストラフラット オートマティック 5377」を発表。ブレゲの名を世に知らしめるきっかけとなったギヨシェのダイヤルがエレガンスを醸し出すモデルで、厚さ7ミリのケースに、当時最薄の自動巻きトゥールビヨンが収められている。それを可能にしたのは、両方向に回転するペリフェラルローターである。

 同年には、「クラシック トゥールビヨンパーペチュアルカレンダー 3797」も発表。ローマ数字とブルーのスチール針を採用することで視認性を向上させたダイヤルのデザインは喝采を浴びた。2017年には、真太陽時と平均太陽時の差である均時差表示機構を備えた「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント5887」を発表した。このモデルはダイヤルの中央にギヨシェ彫りによる波形の模様が入っており、ブレゲが1815年にルイ18世から王国海軍時計師に任じられたことを思い出させる。2018年に発表した「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック 5367」では、高温焼成のグラン・フー・エナメルをダイヤルに採用し、それまでのモデルにあったパワーリザーブインジケーターを、手作業で面取り加工を施してスピネル(尖晶石)を配したトゥールビヨンのブリッジに置き換えている。

本記事は2021年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39

1 2 3

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

いま超高級品が元気!

類い稀なるエルメスの ポロサス クロコダイル

フィレンツェ10年仕込み! 新星“ORMA”が人気沸騰の予感

MOF受章職人による パリ発の研ぎ澄まされた鞄

オーダースーツの新潮流は 仕立て映えするソフトラグジュアリー

極上素材のセットアップで 優雅なリラックス時間を

群を抜くしなやかさの 極上レザーブルゾン

限られた者だけが 手に入れられる“音”

毎日使える 1000万円超えの機械式時計

日本における マセラティ絶好調の理由

数千万〜億超えのクルマが 次々と完売!

落札記録を更新し続けた オークションの世界

人気が急上昇 国内の億超えリゾート物件