March 2015

RALPH LAUREN
THE AMERICAN DESIGNER

偉大なる、アメリカンヒーロー
―ラルフ・ローレンのすべて―

by wei koh
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2001年9月に行われた、2002年春のラルフ ローレン コレクションのランウェイショーにて、ピンクポニーの初めてのカプセルコレクションが発表された。

子供時代に見た、母の恐怖 ラルフ・ローレンが患者ナビゲーションの重要性を認識している理由は、子供時代のある思い出があるからだ。

「私の母が、自分が乳がんではないかと思い込んだことがあったのです。母は非常に怯えた表情をしていました。馴染みのない外の世界に出て行き、医師の診察を受けるという行為に、大きな恐怖を感じていたのです。幸いにも、私の妻の母親が、『近くのお医者さんのところへ連れて行ってあげる』と優しく申し出てくれたおかげで母は病院に行き、『問題ありませんよ』という診断を聞くことができました。ラルフ・ローレンがん予防治療センターに患者ナビゲーションのプログラムを取り入れたかったのは、この経験があるからです。医療システムのなかで、個人が戸惑うことは非常に多い。しかし、自分の顔を覚え、丁寧に接してくれる人がいれば、気持ちはずっと楽になるでしょう。そして希望さえ感じるかもしれません」

 フリーマン医師は言う。

「ラルフはこうした問題をよく理解しています。彼はブロンクスの質素な環境で育ちました。だからハーレムというコミュニティの状況を、非常にリアルに把握できるのだと思います。彼は大きな富を手にしているけれど、最初からそうだったわけではなく、自らの力でそこまで上り詰めたのです。ですから、彼には今でも庶民的な親しみやすさがある。彼は物静かで、とても聞き上手な人です。しかし、ひとたび口を開くと、とても大切なことに気づかせてくれるのです」

あなたがピンク ポニーを買う意味 ふたつのがんセンターを建設したラルフ・ローレンは、患者の治療とがん研究には、大きな財源が必要なことを実感した。そこで彼は、がんとの闘いにいっそう力を注ぐべく、新たな長期プロジェクトを立案した。それが、“ピンク ポニー”と名付けられた新しいコレクションである。この売り上げを通じて、自身のがんセンターのみならず、世界各地の17を超える慈善事業やがん専門病院のために資金を募るというものだった。

 ピンクポニーの支援先としては、イングランドのロイヤル・マースデン病院、シンガポール・ブレスト・キャンサー・ソサエティー、キャンサー・オーストラリア、そして日本の公益財団法人である日本対がん協会などが挙げられる。

「がんを対象とする慈善事業を援助できる仕組みを作りたかったのです。そんな中で、ピンクポニーは自然に生まれました。乳がんの啓発運動のロゴはピンクのリボンでしょう? ポロのロゴを使いたかったので、ピンクのポニーにするのが自然だと考えました」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 03
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