March 2015

RALPH LAUREN
THE AMERICAN DESIGNER

偉大なる、アメリカンヒーロー
―ラルフ・ローレンのすべて―

by wei koh

9.11のときに、何をしていたか その中でも、ラルフ・ローレンがひときわ重視しているものがある。2001年9月11日、ニューヨークにおけるテロで遺児となった子供たちのための奨学基金“アメリカン・ヒーローズ基金”だ。

「9.11の出来事は、堪え難いほど衝撃的な体験でした。あの日、私は、ニューヨークの公園でランニングをしていました。すると誰かが『おい、いまワールドトレードセンターに、飛行機が突っ込んだぞ!』と叫んだのです。私は最初、事故だと思っていました。帰宅すると、家族がテレビを見ていて、子供たちは泣いていました。妻のリッキーは娘ディランに連絡を取り、その無事を確認しようと必死でした。次の瞬間、私たちはワールドトレードセンターが崩壊するのを見たのです。あれは、この国が一度も体験したことがない事態でした。われわれはそれまで、こうした事態は遠い外国か、大昔のものだと思っていました。だから、とてつもない恐怖と喪失感に見舞われました。すべてが終わったとき、私たちが願ったのは、9月11日に命を落とした消防隊員、警察官といった人々の子供たちの教育費を支援することでした」

正しいことを目指す心 医師ハロルド・フリーマンは、ラルフ・ローレンを評して、こう言う。

「彼はデザインの天才ですが、彼が本当にすごいのは、製作をするときと同じ独創性と情熱を発揮して、貧しい人々を助けているところです」

 息子デイヴィッド・ローレンは語る。

「服を作ること、洗練されたライフスタイルを広めることは、素敵な目標です。しかし、この世界には、苦しみに満ちた別の側面がある。そのことを心に刻み、バランスの取れた考え方をする必要があります。お客様には、当社のブランドから、本物の情熱と、本物の誠意と、本物のヒューマニズムを感じ取っていただけるでしょう。私たちはどんなときでも本物を大切にします。だからこそ、私たちの援助は、偽りのない、真の援助でなければならない」

 ラルフ・ローレンは、最後に大切なメッセージで話を締めくくった。

「自分より他人を思い、受けた恩を返し、誰かの人生を変えることができるとき、人は幸せな気持ちになるものです。私は完璧ではありません。失敗もしました。けれど、私はこれからも、正しいことをしようと努力を続けるつもりです」

 ラルフ・ローレンほど一貫して、そして惜しみない心で、正しいことを追求してきた人物はいないといえよう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 03
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