NEO TRADITIONAL GAZATTEER|RAKISH TOKYO GUIDE vol.6

VICK TAILOR
ヴィックテーラー
日本らしい美しさを追求した柔軟性も魅力のテーラー

December 2019

東京で修業したからこその柔軟性に長けたスタイルで
高い評価を得ているのが、近藤卓也氏のヴィックテーラーだ。
photography yasutoshi sawano text yuko fujita

スリーブラインと、ラペルから裾に向かって描かれた弧の美しさが際立っている。肩幅をやや広くとってグラマラスなスタイルに見せつつ、シャープなラインとふくよかな丸みが溶け合った、近藤氏らしい仕立ての1着だ。スーツのビスポークは¥350,000~、ジャケット¥250,000~、トラウザーズ¥100,000~。仮縫いを含めて納期は約6カ月~。

 2003年に独立してヴィックテーラーを開いた近藤卓也氏。10代後半で30sの世界に魅せられ、ケーリー・グラントやフレッド・アステアに憧れていた時期があったという。工房の棚には洋書や洋雑誌がズラリと並び、“好き”がヒシヒシと伝わってくる。92年から壹番館洋服店、99年から髙橋洋服店で修業を積む中で、30sへの憧れはスーッと消え、今の時代に合った服へと傾倒していったという。

 今は英国とイタリアのスーツのどちらかいっぽうに傾倒しているというわけでもない。そう話す近藤氏の服には、確かにそれぞれの美味しいところが詰まっている。

 言葉で説明するのは難しいが、客と話をするなかでどのようなスタイルが好きなのかを理解し、スタイルを微妙に変えていくのが氏の手法だ。製作中のジャケットを何着か拝見すると、肩やゴージラインの塩梅など、それぞれが微妙に異なっている。それでも仕上がりは不思議と近藤氏の服になる。

「お客様が自分で服を作れたら、こういう感じの服を作るんだろうな、というイメージを常にもって仕事に臨んでいます。意識していることですか? 日本らしさでしょうか。つまり、丁寧な仕事です」

 氏は“日本らしさ”という、潔い言葉で言い切った。ずっと日本で学んできて自分なりに進化させてきたからこその、自負の表れなのかもしれない。

VICK TAILOR
東京都中央区銀座2-12-4 アジリアJ’s 701
TEL.03-5565-1525
営業時間:11:00~20:00(予約制)
定休日:水曜
www.vicktailor.jp/

本記事は2017年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 16

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

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