October 2023

THE COURT OF APPEAL

英国王室の洒落者たち

英国のテーラリングにとって、チャールズ3世ほど強力な擁護者はいないだろう。彼は最後の“サルトリアル・キング”となるのだろうか?
text josh sims

パキスタンへのロイヤルツアーで、仏教僧院の遺跡を訪問したチャールズ。彼の装いの特徴は、ダブルのジャケット、ダブルカフスのシャツ、ブートニエール(生花の場合も)、パフドチーフ、小さな結び目のタイなどである(2006年)。

 サヴィル・ロウは、“チャールズ効果”を待ち望んでいる。チャールズ皇太子のファッションは、過去74年間、ずっと世間の注目を浴びてきた。チャールズ皇太子は長い間、英国のベストドレッサー・リストの常連だった。だから、彼の国王即位は、英国のテーラリング業界に好景気をもたらすと期待されている。

 彼の好みは、ドレープがあり、ポケットフラップがないダブルブレストスーツである。ことさら威厳を感じさせるものではないが、一貫した、そして国王にふさわしい気品に溢れた装いだ。

「彼のように服を美しく着こなす人が顧客であることを、私たちは誇りに思っています」とアンダーソン&シェパードのオーナー、アンダ・ローランドは言う。同社はギーヴス&ホークスと並んで、チャールズの御用達テーラーであり続けている。

「彼はダンディであることよりも、仕事用のワードローブとは何かを理解し、上手に着回しをしている。例えば、ブルーのスーツを何通りにも着こなし、同じように見えないテクニックを持っている。出席しなければならない場が無数にあり、いつも写真を撮影されていることを考えると、彼がいかに巧みにコーディネイトをしているかがわかる。アクセサリーをうまく使い、抜群のセンスでクラシックの限界を押し広げているのだ。英国紳士の世界的なイメージは、やはり国王と王室によるところが大きい」

 彼は多いときには、一日に5回も着替えなければならない。そしてその度に、靴ひもにまでアイロンをかけるのだという。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 53

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