NEO TRADITIONAL GAZATTEER RAKISH TOKYO GUIDE vol.11
FUGEE フジイ
究極の手縫い鞄作りを
目指し続ける真の求道者
December 2019
と語る藤井幸弘氏。到達せんとする世界はあまりにも高い。
上のクラッチバッグは革小物という捉え方で、¥290,000~(納期1年~)、下のブリーフケース「KM39」は、革の柔らかな質感と丈夫さを備えたモデルとして、12年にわたって定番となっている人気モデルのひとつ。使い込むうちに繊維がほぐれて柔らかさが増していく。定番8モデルのセミオーダーは¥330,000~(納期3~4年)、ビスポークは¥400,000~(納期6年~)。
ビスポークの納期は今や6年という。今回取材した中では、抜きんでて長い。フジイの藤井幸弘氏は、オルタスの小松直幸氏の師匠であり、彼を育てた職人であることからも、どれだけ鞄作りに真摯に向き合っているか、おわかりいただけよう。
手縫い鞄職人としての藤井氏を端的にいうなら、表現者であり、求道者だ。鞄を図面通りに仕立てるのでなく、何をどう表現したらより美しく見えるか、革の美しさをより引き出せるか、そこを追い求めて常に格闘し続けている。
「足し算引き算して縫い合わせれば、それなりの形になるんです。自分なりの風合いと耐久性をどう表現していくかが、そこが本当に難しいですね。毎回毎回が勝負なんです。ビスポークでは、お客様の要望を汲みながら自分を表現していかなければいけません。今は最低2個の試作を作ってから本製作に取りかかります」
そのくらいして、ようやくこの革を扱えるかなというのが見えてくるという。普段から扱っている革でも、新しいことをしようとするとわからないことだらけで、経験を積むほど怖さと同時に上のレベルを追い求める欲が出てくるそうだ。
手縫い鞄作りのキャリアは来年で40年になる。達観するどころか、10年前よりもひとつの鞄を作るのにかける時間は増えているという。6年という歳月を待てる人のみが、フジイの鞄を享受できるのだ。
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本記事は2017年5月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 16