July 2019

BIG LIGHT

俳優:スタンリー・トゥッチ
ハリウッドの寵愛を受ける才人

photography tomo breje text tom chemberlin fashion and art direction sarah ann murray
issue10

『ラブリーボーン』(ピーター・ジャクソン監督、2009年)のジョージ・ハーヴィ。

「頭でっかちになると、クリエイティブなものが死んでしまうんだ。例えば、親が子供を芸術家にしたいと思うと、やり方や型にこだわらずに自己表現させ、ノーと言わずに何でも好きにさせることがある。でも、芸って野放図なものじゃない。むしろ、その逆だ。そこには特有の枠がある。芸が存在している理由の一つは枠に反発するからだし、新しい型や枠を生み出そうとするからだ。感情を理解してきちんと表現できるのは、芸という表現にとってすごく健全なことだね」

自分の人生を捧げる覚悟で 残念ながら、芸術性や創造性といった分野は「セレブリティ・カルチャー」に浸食されつつある。かつて有名人といえば誰もが認める才能の持ち主だったが、最近ではお騒がせタレントとして荒稼ぎし、しまいにはフォーブス誌の「もっともパワフルなセレブ」ランキングに登場する者まであらわれた。こうした風潮のせいで、本物の才能を持つ名優たち、つまりポール・ニューマンやリチャード・バートン、シドニー・ポワチエ、ローレン・バコール、オードリー・ヘプバーンの跡を継ぐ現代のプロフェッショナルの縄張りが荒らされ、真の芸術的価値で注目されるのが難しくなるというジレンマを抱えている。トゥッチは当然ながら、偽りの名声に異議を唱える。

「僕もこれには困ってるんだ。理解できないし、ひどいやり方だよ。そんな輩には全く興味がないね。誰も興味がないはずだ。残念ながらそういう人は多いし、それで有名になってる。実力もないのに有名になっても、つかの間の名声に過ぎない。がんばっている人が素晴らしいのは、努力して何かを成し遂げてるからだ。自分の人生を捧げてもいいと思えるなら、教師でも、医師でも、配管工でも、どんな仕事でもいい。それをきちんとやったのか、全力でやったのか、一歩先まで進んだのか、物事をより良くしたのか?」

 トゥッチがこれまでのキャリアで得た名声は、良いことのために利用されている。彼は、サミュエル・L・ジャクソンが進めている男性のがんに対する啓蒙活動「ワン・フォー・ザ・ボーイズ」をはじめ、数々のプロジェクトに参加している。ジャクソンはこのコラボレーションについて次のように話す。

本記事は2016年1月23日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 08

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