August 2019

CUBA’S FINEST

キューバ―最上の紫煙を求めて―

1959年の革命以降、共産主義を貫いてきたキューバは、
米国からの経済封鎖という憂き目に遭い続けてきた結果、
今日、世界の中で際立って固有の文化を築いている。
さらにこの国には、最上の葉巻というもうひとつの宝がある。
photography adrian legrà gutierrez

 2016年現在、世界にこれほどまでに情緒豊かな街並みが残っている国はほかにあるだろうか。カリブ海最大の島であるキューバの首都ハバナには、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の世界が、今もそのまま残っている。キューバ革命以前、事実上アメリカの支配下にあった当時の大量に輸入された50年代のクラシックカー、シボレーのインパラ、ビュイックのリヴィエラ、さらにはオールズモビルのスーパー88までが現役で街を駆けるその風景に、まるで60年前にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。オールドハバナを散策すれば街にあふれる陽気なサルサのリズムや踊りが耳に届いて心地よい。そのリズムを身体に刻む老若男女の姿は、ここがカリブ海唯一の社会主義国であることを想像させない。

 が、キューバが南北アメリカ大陸に初めて誕生した社会主義国であることは、紛れもない事実である。フィデル・カストロ率いる革命軍がゲリラ闘争の末、1959年1月1日にアメリカによる半植民地状態と化していたバティスタ政権を倒してキューバ革命政権を成立させると、アメリカ企業が押さえていた土地と産業を国有化して反米路線を打ち出した。アメリカ政府は61年にキューバとの国交を断絶。翌62年にはキューバに対し一切の輸出入を禁止する経済封鎖措置を採択した。

 以降、今日までキューバは国の共産主義政策を貫き通してきたため経済は疲弊し、世界の中で孤立してきた。食料をはじめとする日常生活品は政府からの配給で賄われているが、配給制度そのものがひっ迫している。また、高度な医療・教育・住居がすべて無料とはいえ、一般的な国民の月収は15米ドルに満たない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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