July 2019

BIG LIGHT

俳優:スタンリー・トゥッチ
ハリウッドの寵愛を受ける才人

photography tomo breje text tom chemberlin fashion and art direction sarah ann murray
issue10

ネオノワール映画『パブリック・アイ』(1992年)。

「ずいぶん前になるけど、友人が監督を務める舞台に起用してもらったんだ」

 駆け出しの役者だった彼は、強い印象を与えようと意気込んで舞台に臨んだ。

「ところが監督はこう言った。『やめてくれ、余計なことはしないでくれ。人が役者でいられるのは、人に観たいと思ってもらえるからでもあるんだ!』 全くその通りだ。これは僕にとっていい教訓になったよ。役者は登場人物の真実を伝えるだけじゃなく、自分が参加している作品の雰囲気を理解して、その雰囲気になじまなくちゃいけない。目立とうとすると失敗するんだ。これを若い役者に言うとショックを受けるが、それじゃダメだよね」

 おそらく彼の演技力は、なにより天賦のものだろう。だが、はっきりしているのは、トゥッチが人の感情や感覚を深く理解しているということだ。これこそが、彼の才能の礎だろう。研究や学びを大切にする彼のアプローチには非常に冷静な側面があるが、客観と主観のバランスも取れている。

本記事は2016年1月23日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 08

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