July 2019

RUNNING WITH SCISSORS

モードになったスウェットパンツ

現代の男は、極上のくつろぎを自由に手にしている。
それが、ファッションにスウェットパンツを取り入れる着こなしだ。
もはや、スウェットは“体操服”ではないのである。
text josh sims photography ben harries fashion editor sarah ann murray

1984年のロナルド・レーガン大統領。エア・フォース・ワン機内にて。タカ派で知られたレーガンが、フォーマルとカジュアルのボーダーを軽々と超えていたとは驚きだ。

 コメディアンのディミトリ・マーティンは、「スウェットパンツを穿く人こそが最も汗(スウェット)をかきそうにない人だ」と指摘したが、これは当たっているだろう。それはスポーツをするための服ではなく、缶ビール片手にソファでくつろぎながらスポーツを観るのに最適な服となっていた。

 実際のところ、スウェットパンツは長い間、男性服のなかでもダサい服の代表格だとされてきた。腰回りがゆるいパンツは、日曜日の外出着で、染みがつき、惨めに落ちぶれた社会のはみ出し者たちが着る服だった。

 しかし、近年ファッション界は、スウェットパンツをファッション・アイテムのひとつとして生まれ変わらせるべく、努力奮闘してきた。

 特に、素材に贅沢なカシミアを使ったことで、その可能性が広がった。ハーディ・エイミスやジョン スメドレーといったブランドが独自のデザインのスウェットパンツをリリースし、ベルルッティやマイケル・バスティアン、トム・ブラウン、ボッテガ・ヴェネタ、デレク・ローズ、ドルチェ&ガッバーナ、エルメスといったところもそれに続いた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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