Monday, July 22nd, 2019

世界が注目する
ニッポンの新世代テーラー

状況は大きく変わった。世界がニッポンの新世代テーラーに注目し始めている。
ニッポンで、イタリアで、英国で。学び場はそれぞれ異なれど、
仕事へのほとばしるパッションは皆同じだ。伝統と引き換えに、
彼らには試行錯誤しながら進化し続ける自由な精神がある。
text yuko fujita photography ethan newton

Noriyuki Ueki
上木規至

1978年生まれ。2003年にナポリに渡り、アントニオ・パスカリエッロとルイジ・ダルクオーレに師事。2006年に帰国後、タイユア タイ内に工房を構える。2015年、青山に自身のサルトリアをオープン。The ArmouryやVilla del Coreaなど、早くから海外での受注会も開いている。

SARTORIA CICCIO
―サルトリア チッチオ―
世界に認められた新世代の牽引者

2015年、青山に自身のサルトリアをオープン。
今や世界で知られる存在となった上木規至氏は、
本場のナポリ仕立てに比肩する実力の持ち主だ。
 動きが滅法速い。リモコンで軽く早送りしているような感じとでも言おうか。手縫いの軽快なリズムはナポリのベテランサルトそのものだ。単純に強く引っ張って速く縫うだけなら簡単だが、チッチオのように適度な糸のテンションで速く縫うのは至難の業である。サルトの間ではその絶妙なステッチを「プント・フレスコ」と呼んでいるが、彼の仕事はその最上級「プント・フレスキッシモ」と呼ぶにふさわしい出来栄えだ。
 加えてチッチオには確固たるハウススタイルがある。ナポリのトップサルトリアがそうあるように、伝統的なスタイルを守りつつ、見事に自分の色を出している。身体を柔らかく包み込む肩と胸回り、やや下がり気味のゴージライン、絞られながらも着るとゆとりを感じるウエストなど、誰が見てもチッチオとわかる優雅さに満ちている。
「Ciccio(チッチオ)」は上木氏のニックネームだ。ナポリでの修業時代、師匠のアントニオ・パスカリエッロ氏がつけた。イタリア語でチッチオの名は「太っちょくん」を意味する一方で、親しみを込めて「かわいい坊や」といったニュアンスも強く含む。治安の悪いスペイン地区に住み、細い身体ゆえ何度も危険に遭遇しながら、家とサルトリアのみの往復生活を送り、帰宅後もひたすら服を縫い続けていた彼のひたむきさに対しての、親方なりの愛情表現だったのかもしれない。
 2015年4月、チッチオは青山の一等地に念願だった自身のサルトリアをオープンした。4人のチームを組み、年間約100着をこなしている。今や世界中のウェルドレッサーたちが彼のスーツを仕立てにやってくる。香港のThe ArmouryやソウルのVilla del Coreaなど、世界が注目するショップでのオーダー会も定期的に行っている。今やチッチオはアジアのクラシックシーンにおけるヒーローなのだ。
 2016年1月、本誌が発売される頃に、チッチオは約10年ぶりにナポリの地を踏む。修業時代はナポリでの生活を謳歌できず、苦しかった思い出しかないそうだが、改めてナポリの街を見て、彼は何を感じるのか。今年のチッチオは、さらなる進化を遂げるに違いない。

サルトリア チッチオ
東京都港区南青山5-4-43
TEL.03-6433-5567
営業時間:11:00 ~ 20:00
定休日:日曜
www.ciccio.co.jp/

本記事は2016年1月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08

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