The Rakish ART ROOM Vol.03
今買える、世界の名画 Vol.03
モイーズ・キスリング
July 2020
ダリアメランコリックな人物画が知られるキスリングだが、彼はかなり早い時期から花卉画を描いた。特に1920年前後からは、細部が入念に描写されるようになり、花の肖像画のような風格を漂わせ始める。本作は各種ダリアの色とりどりの表現に加え、青地に金の模様が入った豪華なカーテンや、白い壺の質感など見どころの多い作品である。 キャンバスに油彩 73×55cm 1948年制作 ¥35,000,000(税込価格) お問い合わせ:ザ・レイク・ジャパン info@therakejapan.com
20世紀初頭、パリで活動した異邦人の芸術家「エコール・ド・パリ」の重要な画家のひとり、モイーズ・キスリング(1891-1953)は、奇しくもあだ名を「キキ」といった、ポーランド生まれのユダヤ人である。美術学校卒業後、19歳のときにパリに出た彼は、モンパルナスを拠点に、ピカソ、ブラック、モディリアーニ、パスキンなどと交流。豊かな色彩と透明感溢れる、独自の絵画様式を築き上げた。
「エコール・ド・パリ」というと、病気と貧困の中で亡くなったモディリアーニや、放蕩の末に壮絶な自殺を遂げたパスキンなど、「呪われた画家」のイメージがつきまとう。しかし、エキゾチックな容貌と持ち前の社交性から「モンパルナスのプリンス」と呼ばれたキスリングは、早くからユダヤ系の支援者に恵まれ、第一次世界大戦で戦死した親友から莫大な遺産を相続し、作品も売れ続けた。彼が経済的に困窮することは一生なかった。
本記事は2019年7月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 29