RALPH LAUREN
THE AMERICAN DESIGNER

偉大なるアメリカンヒーロー、ラルフ・ローレンのすべて

May 2024

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共同経営事業、ラルフ・ローレンがん予防治療センターの創始者たち。(左から)サミュエル・ダニエル医師、ハロルド・ヴァーマス医師、ラルフ・ローレン、ハロルド・フリーマン医師。

医者のファッション・センス!? ハロルド・フリーマン医師は、当時を振り返って言う。

「あれは2000年、私がハーレムの病院にいたときのことです。他の病院のCEOから『ラルフ・ローレンに会ってほしい』と言われたんです。彼はニーナ・ハイド乳がん研究センターの他にも、何らかの方法で人々の役に立ちたいと思っていたのです。しかし、私は彼に会うことに、少々臆していました。なぜなら私は、ファッション・センスにはまるで自信がなく、いつも冴えないネクタイをしていたからです(笑)。ですから、私を見た彼が、『フリーマン先生、決まっていますね』と言ってくれたことは、一生忘れません。おかげで、すっかり緊張が解けました」

 フリーマン医師は続ける。

「ラルフの質問は『われわれのすべきことは何ですか?』というものでした。彼はすでにハーレムの状況が悲惨なことを知っていました。そこで私は、ハーレムにがんセンターを設立し、住民がコミュニティーの外へ行かずに済むようになれば、状況は改善できると言いました。ただし、素晴らしい施設であることが条件だとも付け加えました。私がプレゼンテーションしている間、彼はほとんど発言しませんでした。そして私が話し終えると彼は立ち上がり、こちらへ歩み寄り、私の手を握ると、『フリーマン先生、私が力をお貸ししましょう』と言ったのです」

 フリーマンは思い出し笑いをしながら、話し続けた。

「私は彼の、『力を貸しましょう』という言葉の意味がよくわかりませんでした。しかし、数週間もしないうちに、後にラルフ・ローレンがん予防治療センターとなる施設の開業資金として、まず500万ドルが送られてきました。おかげで同センターは、2003年にハーレムで開院することができました」

 創立以来、ラルフ・ローレンがん予防治療センターは、10万人以上の患者を治療してきたが、そのうち1万3000人は保険に加入していなかった。

「開院してからの11年間で、がん生存率、早期診断、がん治療の状況を大きく改善することができました。今後もこの流れが続いてほしいと思っています。私たちの活動の成否を決めるのは、このコミュニティの状況を変えられるかどうか、という点にかかっているでしょう」

 この点は、ラルフ・ローレン本人もまったく同じ意見だ。

「われわれがセンターで実現したかったのは、勝手がわからなかったり、恐怖を感じている人々をケアすることでした。そこで、“患者ナビゲーター”と呼ばれるスタッフを配置しました。患者ナビゲーターの仕事は、治療のさまざまなステージに患者を導くことです」

 フリーマン医師が続ける。

「無保険、教育不足、生活苦といった問題を抱える多くの患者をサポートするために、コミュニティから患者ナビゲーターを選んで教育しました。彼らは患者にとって、あらゆる問題を一緒に考え、手助けしてくれるパーソナル・ガイドなのです。彼らが扱うのは、経済的問題だけではありません。医師の言葉が理解できない人も多いため、コミュニケーションの問題も扱いますし、ヘルスケア・システムそのものの説明も行います」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 03
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