BIG LIGHT
俳優:スタンリー・トゥッチ
ハリウッドの寵愛を受ける才人
July 2019
『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(2011年)のエイブラハム・アースキン博士。
「彼と協力しようと考えたのは、理にかなっていたよ。彼はカリスマ性があり、感性が豊かで、すごく知的だからね」
トゥッチは最近、人のためになることをしたいという思いと料理への情熱が相まって、2冊目の料理本『ザ・トゥッチ・テーブル』を出した。この本の収益はトラッセル・トラストやニューヨークのフードバンクに寄付される。
「『名声』のおかげで、この本が出せたよ。僕は料理が大好きだし、変に聞こえるかもしれないけど、自分のレシピをみんなに伝えたいんだ。月並みな言い方だけど、本当にそうしたい。しかも、印税はすべてトラッセル・トラストに行く。美味しい料理を食べて育った自分はすごくラッキーだと思うし、そうでない人はたくさんいる。だから、ごくシンプルな方法で食に対する関心を高めることができるのなら、その収益はトラッセル・トラストのような団体に寄付したい」
監督としても開花する才能 1996年に公開されたトゥッチの監督デビュー作を観れば、料理に対する彼の思い入れがわかるだろう。『シェフとギャルソン、リストランテの夜』でトゥッチが演じるのは、疲れ果てたギャルソン。この映画はアメリカで成功しようと戦うイタリア移民の話だが、特筆すべき点は無理な要求をしてくるマフィアの影がないことだ。コメディながら深みがあり、ブロードウェイの舞台『レンド・ミー・ア・テナー』で「クレバーなアイデアにあふれた茶目っ気のある監督」と評されたトゥッチの持ち味がこの作品でも生きている。レストランに「パラダイス」という大げさな名前をつけたユーモアも、アメリカンドリームを夢見て賭けに出る主人公の純朴さを際立たせ、観る人の琴線に触れる。その賭けの成否を握るのは、ルイ・プリマという歌手がひいきにしてくれるかどうかなのだが、「彼はただの人じゃない。有名人なんだ」というセリフが、戦後のアメリカにおける幸せの追求、そして人生や自由に対するゆがんだアプローチを一言で表している。
『ロード・トゥ・パーディション』(2002年)。
本記事は2016年1月23日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 08