May 2021

BADMAN FOREVER

俳優:ランドルフ・スコット
永遠のガンマン

アメリカ人男性の古典的理想を象徴する存在だった俳優ランドルフ・スコット。
しかし私生活においては、洗練された装いの紳士然とした投資家だった。
text stuart husband

Randolph Scott / ランドルフ・スコット1898年、バージニア州の裕福な家庭に生まれる。幸運にも親族の知人だった、大富豪で映画製作者のハワード・ヒューズと出会い、エキストラとして映画デビュー。数本の映画の端役で出演後、1931年にパラマウントと契約。以降、西部劇を中心に活躍する。私生活では、ケーリー・グラントとの共同生活中に1度目の結婚、1944年に21歳年下の女優と2度目の結婚をしている。

 1963年のトマス・ピンチョンのデビュー小説『V.』で、主人公ベニー・プロフェインは、ランドルフ・スコットが主演する西部劇を観ながら、高潔な主人公を自分とは月とスッポンだとばかりに、こう形容した。「冷静沈着で寡黙。必要なときに口を開いて正しいことを言う。闇雲に喋ったり無駄口を叩いたりしない」。プロフェインのこの分析は、多くの映画ファンが抱くイメージと同じだった。

 スコットは、オスカー像を手にすることこそなかったものの、寡黙で控えめだが意志は固く勇敢で、力強いが人前には出たがらないカウボーイを演じ、1940年代後半から50年代前半にかけてのスターになった。『群盗の町』(1946年)から『昼下りの決斗』(1962年)まで、39の西部劇に出演した彼は、傷ついても屈することのない高潔なイメージを築き、男性の理想を象徴する存在となった。

 イメージが固定されることについて、スコットは潔いほど無頓着だった。ハリウッドのゴシップコラムニスト、ヘッダ・ホッパーによるインタビューで、彼はこう語った。

「現状に満足するのが大事だと思っている。新たな分野で成功したいとは思わないよ。西部劇はこの業界の要。確実にお金になる分野だしね」

“バチェラー・ホール”にて、長年の同居人であるケーリー・グラントと。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39
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