May 2021

BADMAN FOREVER

俳優:ランドルフ・スコット
永遠のガンマン

text stuart husband

1937年のスコット。

 だがそんな彼にも、自身の演じる貧しいヒーローとの共通点があった。“慎重で控えめなところ”である。彼は1961年のインタビューで「正直、注目を浴びるのは好きじゃない」と語った。念頭に置いていたのは、劇作家デーヴィッド・ベラスコの格言である。

「“対価が支払われない限り、決して人前に姿を見せないこと”。それは理にかなっていると思う」

 スコットは、1930年代半ばから40年代にかけての12年間、断続的ではあるが、ケーリー・グラントと同居生活を送った。サンタモニカの海辺の彼らの家は“バチェラー・ホール(独身男の住まい)”と呼ばれ、ふたりが友愛を超えた特別な関係にあるのではないかという噂を巻き起こした。1986年11月にグラントが亡くなると、スコットはこう述べた。「彼は僕の親友だった。その件に関する僕のコメントはそれがすべてだ」。その3カ月後、スコットも後を追うように亡くなった。

円熟とともに魅力が増す役柄 スコットは、“冷静沈着”を誉め言葉とし、君子危うきに近寄らずの精神が常に重んじられる環境で育った。子ども6人の中で唯一の男子で、父は繊維会社の管理技術者、母は資産家の出身だった。おかげで彼は一流の進学校を経てノースカロライナ大学に進み、父の会社へ入ることを視野に入れて繊維工学を学ぶ。だが机に縛られた将来への興味はすぐになくなった。運動神経が良く、身長が190cm近くあった彼は、フットボールも水泳もセーリングも得意で、第一次世界大戦中には年齢を偽って入隊し、フランスで軍務を果たしたほどだった。

競馬大会でのスコットと女優のヴィヴィアン・ゲイ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 39
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